『入学案内 ~ようこそ、星河丘学園へ~』1

本日はオリジナル創作ssを。某支援所で先日まで連載していたものの、加筆修正版です。
*7/30 微修正

『入学案内 ~ようこそ、星河丘学園へ~』

第壱話 こんにちは、新たなワタシ


 くそぅ、騙された。
 どうも話がうま過ぎるとは思ったんだ……いや、今更こんなコト言っても、愚痴にしかならないけど。

 ことの始まりは、俺たち生徒役員4人が理事長に呼び出されたことだった。
 ウチの学園は元々男子校だったんだけど、来年度から共学化し、女子の入学も受け付けることになっている。
 無論、そのことは俺たち生徒にも知らされてるし、俺達としても大歓迎だ。

 で、現行の生徒会に「来期入学案内用のモデルになってくれないか」という依頼が、理事長経由で学園側から来たワケだ。
 了解してもらえれば、内申書も考慮するし、大学推薦も前向きに考えるというから、会長の姫川若樹以下、副会長の俺・白鳥理雄や1年生の書記・天迫星児、会計の羽衣桃矢も喜んで了解した。
 したんだが……。

 「──女装するとは聞いてないんですけど!?」
 首から下に人肌そっくりな極薄のボディスーツを着せられ、顔に特殊メイク(?)を施されたうえ、来期からの女子用制服まで着せられて、憮然とする俺達。
 髪の毛? 「ナノマシンを利用した育毛促進剤」とやらを頭に塗られて、強制的に伸ばされたよ。
 え、制服の下? ……頼む、聞かないでくれ。情けなくなってくるから。
 「まーまー、いいじゃないか、白鳥。学校公認でこんな愉快なイベントができるなんて、滅多にないことだし」
 くっ……誰だ、「おもしろければそれでいい」なんて豪語するヤツを生徒会長に選んだバカは?
 「そーだよー。学園祭の演劇だって、理雄にぃ、ヒロイン役してたじゃん。アレと一緒だって」
 学祭の時は舞台の上限定だし、役柄を演じてただけだからな。
 それから、星児。いくら幼馴染だからって、学校では白鳥先輩と呼びなさい。
 「ふっ、あいかわらず理雄先輩と星児くんは、兄弟みたく仲がいいのですね」
 はごろも~、お前はこの生徒会で数少ない常識人なんだから、ちっとは止める側に回ってくれよォ!
 「ですが、一度引き受けた以上、仕事は完遂するべきでしょう?」
 う゛っ……そう、正面きって正論を言われると反論しにくいな。
 仕方ない。「女子生徒の役」を演じるという「舞台」なんだと割り切って、役柄に徹してみるか。
 さて、そうと決まれば──。
 「(コホン)わかりましたわ。皆さん、わたくしたち星曜学園生徒会一同、来期の後輩達の模範となるべく、見事モデルを務めて見せますわよ!」
 「「「はーーーーい!」」」

 ──とまぁ、そんなこんなで写真&動画の撮影(後者は入試説明会で見せるらしい)が始まったんだけど……完全に誤算だったのは、その日1日で撮影が終わらなかったこと。
 なんでも、生徒会室での活動だけじゃなく、授業や部活など普通の学生生活も撮りたいからと言うことで、1週間経った今も撮影は続行中だったりする。
 姫川は弓道部、俺は演劇部、星児は水泳部で、羽衣が科学部だから、文化系2&体育系2で都合がよかったらしい。
 しかも、このスーツ、一度着たら脱ぐ時は専用の剥離剤とやらがいるらしく、その上、剥離剤を使ったらボロボロに壊れてしまうんだとか。さらに言うと結構高価。1着につき軽く中古車1台分くらいするらしい。つまり、軽々しく脱いだり着たりできないってコト。
 そんな諸々の事情(ワケ)で、俺達4人は現在、この女子の格好のまま学園生活を送っているのだ。

 なお、予想していたとおり、周囲の反応は上々。
 そりゃ、たとえ中味は♂だとわかっていても、むさ苦しい男子校に可憐な4人の美少女(自分で言うのもナンだが間違ってないと思う)が舞い降りたら、歓迎されないワケがない。
 ──まぁ、野郎にチヤホヤされて嬉しいのか、と言われると正直微妙なんだけど。
 しかし、星河丘が全寮制だったのが救いだな。ウチの親が知ったら、どんだけ悪ノリしたことか。いつも、「息子ばっかり3人兄弟で華がない」って嘆いてたからなぁ。
 もっとも、俺達生徒会4人は今、寮を出て学園の最上階に用意された宿泊施設、通称ペントハウスで共同生活している。さすがにこの姿で(性的に)飢えた男子の巣窟に放り込むのは危険だと判断したらしい。
 本来は、学園に来たお偉いさんが泊るための施設なんだけど、コレが下手な高級ホテル顔負けの豪華さでメチャ快適。今の事態になって一番良かったコトかね。
 朝晩の食事はもちろん、お昼の弁当まで、メイドの格好した職員さんが作って渡してくれる。三食とも寮や学食で出る安さとボリュームだけが売りの大量生産品じゃなく、お金持ちの豪邸で出されるような丹精込めた極上品だ。
 ふたり部屋の寮と違って、各人にひとつ10畳くらいの寝室があてがわれているし、共同リビングはどこぞお屋敷のサロンかと見まがう広さと作り。ちなみに、ここ(サロン)に来て頼めばメイドさんがお茶を入れてくれる……って、どこのお嬢様学校だよ!
 さらに、各人の部屋にシャワーがあるのに加えて、毎日違う香料の入った大浴場まで完備。……ここ、ホントに学園の施設なんだよな?
 暗黙の了解と言うべきか、俺達は全員大浴場を利用することが多い。いや、見かけだけとはわかっていても、やっぱり美少女とお風呂に入れるのって、オトコの夢じゃん? 時々洗いっことかしてるのは……まぁ、若さ故のあやまちってコトで。
 ちなみに、制服だけじゃなく、私服の着替えや……その、下着に至るまで、全部学園側が用意してくれた。身長とかは変わってないんだけど、体型が全然違うから、男の時の衣類がほぼ使えないのだ。男子寮の元の部屋に置きっぱなしだし。
 撮影スタッフから時々、「もっと女らしい仕草や言葉使いをするように」とチェックが入るのが玉に瑕ではあるが、何だかんだ言って、結局のところ俺達はこの「偽・女子学生ライフ」をそれなりに謳歌していたんだ。
 ところが……。

 「えっ、年末までこのまま?」
 「うむ」

 * * * 

 「入学案内」の撮影が始まってから2週間が経った。
 相変わらず、俺達生徒会の4人は快適な女子学生ライフを満喫している。
 普段の授業中こそ、それまでと大差はないものの、放課後の部活や生徒会活動の時間は、以前の男だった(いや、今でも「中身」は男なんだけど)頃とは完全に一変したと言っていいだろう。
 たとえば、生徒会の仕事に関して。
 比較的のんきでズボラな校風を持つウチの学校では、俺達役員4人に一任して、生徒会を手伝ってくれるような酔狂な人間はほとんど皆無だった。それが……。
 「会長、体育倉庫の備品整理、終わりました!」
 「白鳥先輩、応援合戦用のやぐら組み立ての人手、確保できてます!」
 「羽衣さん、エキシビジョン種目用の買い物、そろそろ行っといた方がいいですかね?」
 「天迫~、言われた通り、ウチのクラスのヤツらの出場種目希望リスト、まとめておいだぞー!」
 半月後に体育祭を控えた10月半ば、我らが生徒会には「善意のボランティア」を自称する学生が多数集っていた。
 うーむ、例年は学園祭──こちらは9月末、この「撮影」が開始される数日前終わったばかりだ──以上に、準備のための人手を確保するのに苦労すると思ってたんだが……。
 「ふっふ~ん♪ ま、今のあたしが朝礼で「お願い」すれば、これくらいチョロイものよね!」
 生徒会長の姫川若菜(若樹)の得意げな言葉もあながち間違いではない。
 若菜は、毎年の生徒会長同様、体育祭準備期間の開始にあたって、朝礼で「お手伝い」の人員を募っただけなのだ。
 しかし、考えてもみてほしい。
 むさ苦しい男子校に咲いた可憐な四輪の花(笑)。その中でも黒髪ロングストレートで淑やかな大和撫子っぽい印象の美少女に、「皆さんのお手伝い、お待ちしてますね♪」とニッコリ微笑まれて、骨抜きにされない男子がどれほどいるものか。
 逆の立場だったら、俺だって平静でいられたかは、いささか自信はない。
 「あーー若菜。わかってると思うが、くれぐれもその「腹黒い」中身は、他の人間には見せないようにな」
 元々、悪戯好きでおもしろそうな悪だくみに関しては天賦の才を持ってた若樹のヤツは、「若菜」になって以来、男を惑わす小悪魔の才能を開花させつつあるようだ。
 「ウフフ……わかってますよ、理緒さん」
 そう優しく微笑む様子はさながら天女のようで、「外面似菩薩 内心如夜叉」とはよく言ったものだ……まぁ、本来は女性についての差別表現なワケだけど。
 「それより、理緒さんも言葉づかい、気をつけてね?」
 う゛っ……!
 「ええ、承知しておりますわ!」
 最初に演技した時、深く考えず「高貴でちょっとタカビーなお嬢様」風な言葉づかいのキャラ作りしたんだが、なまじそれが定着しちまったんで、今度はそれに相応しい言動をしないといけなくなったんだよなぁ。
 俺としては、この役柄(ペルソナ)で話すのは少々恥ずいんだけど。
 「先輩達は大変だねぇ。ま、ボクはそんなに気を遣わなくていいから楽だけど」
 星乃(星児)のヤツは「ボクっ娘」キャラだから、比較的地に近いからな。
 「私もあまり変わりありませんね」
 そう言えば、桃子(桃矢)も元から一人称は「私」で丁寧語だっけか。高1のクセに老成したヤツだと思ってたけど、まさかこんな局面で役に立つとはね。
 で、生徒会活動を「自主的に」手伝ってくれるメンツが増えたことに加えて、この姿になってからは部活にも多少変化は現れた。
 若菜の弓道着姿や星乃の水着姿をひと目見ようと、多数の見学者&入部希望者が弓道部と水泳部に押し寄せたのは予想の範囲内だったが、俺の演劇部や桃子の科学部にまで人が来るとは思わなかったぜ。
 まぁ、どちらも文化系クラブのなかでも弱小な部類に入る部活だったから、それはそれで助かったけど。
 ……にしても、俺が舞台でヒロイン役やらされるのは元から(高校生男子でありながら160センチちょっとしかないこの身長がニクい!)だから覚悟はしてたけど、桃子の白衣姿にまで「萌え~」とか言って寄ってくるダメ人間どもは殲滅した方がいいかもしれん。いや、いっそ桃子の発明の実験台にするか。本人達も本望だろうし。
 そうそう、授業の中でも、体育に関してはさすがにこれまでと同じと言うワケにはいかなかった。
 幸い、来年度からの共学化に先立って複数ある体育倉庫のひとつが女子更衣室に改装されていたため、着替えはそこで行っている。
 ちなみに、女子体操服はお約束のごとくブルマーだった。傍から見る分にはいいが、自分が履くとなるといささか気恥ずかしい……と思ってたものの、授業で5、6回履いたら何となく慣れた。履き心地がよくて動きやすいのは確かだしな。
 ──まぁ、時々太もものあたりにネチっこい視線を感じるのだけはなんとかしてほしいけど。

 昼休みは、生徒会室か新設された中庭のカフェテラスで4人で集まって食べることが多い。一度、教室で弁当広げたら、一緒に飯を食おうという誘いが後をたたず、断るのが大変だったからな。
 その点、この4人でかたまってるときは、さすがに気軽に声をかけづらいらしい。

 不便なこと不愉快なことも多少あるものの、新鮮味という部分も考慮すると俺たちにとって、この女装(の域を越えてむしろ変身?)ライフは、メリットの方が大きいのは確かだった。
 仲間内のことに限っても、ぐうたらな生徒会長が(形だけでも)真っ当に仕事をするようになってくれたのと、後輩ふたりからの支援が増えたので、副会長の俺としては損益は大幅にプラスになっている。

 とは言え、いくらなんでも、ずっとこのままというワケにはいかないだろう。
 体育祭まであと一週間を切った頃、いまだ元に戻ることについてOKが出ないことに疑問を感じた俺は、学園の理事長に面会を申し込んだんだが……。

 「えっ、年末までこのままなんですか?」
 ──と、ここでようやく冒頭の会話につながるワケだ。
 「うむ。正確には12月24日、クリスマスイブのパーティーまで、だな」
 予想を斜め上に上回る理事長の指示に、俺は馬鹿みたいにポカンと口を開けてしまった。
 「何しろ撮影を始めたのがつい先日だったからね。イベント関連に女子がいる絵面が圧倒的に足りてないんだよ」
 せめて学園祭前に始めるべきだったな、と溜息をつく理事長。
 確かに、学園祭はもちろん、入学式、プール開き、サマーキャンプや夏合宿、水泳大会といった目立つイベントは既にことごとく済んでるからなぁ。
 むしろ、体育祭とクリパが残っていただけ幸運と思うべきかもしれない。
 「まぁ、そんなワケでだ。君達4人には当面不便なことも多いかとは思うが、もうしばらく協力して欲しい」
 いい歳した大人(しかも自分の学校を経営する偉いさん)に、そう言って頭を下げられては、俺みたいな若僧(今の見かけからすると小娘かな?)としては頷かざるを得ない。
 「不本意ではありますが、承知致しましたわ。ただ、女子学生として生活するうえで色々と不満や不都合な点が出てきた時は、わたくし達も率直に申し立てさせていただきますので」
 「ああ、構わない。むしろ、そうやって「女の子」としての視点から見た問題点を今のうちに洗い出してもらえるほうが、来年度の共学化に際してこちらは助かる」
 成程。言うならば、俺達は正式に女子を迎える前のクローズドβテストってところか。
 学園側がそうと認識してるなら、ヘンに遠慮する必要もない。せいぜい「年頃の女の子」として、不満に思う点をビシバシ指摘してやろう!
hosigaoka
<イラスト:MONDOさん>

-つづく-
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テーマ : 自作小説
ジャンル : 小説・文学

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Author:KCA(嵐山之鬼子)
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