『EVA-ファーム』前編

旧作保管計画その2。
今回のタイトルは、「エヴァ」+「モンスターファーム」なSS、「EVA-ファーム」です。
ちなみに、旧作に関しては、一部の誤字脱字以外、ほぼ手直ししてません。
……いや、今の目で直し始めるとキリがないうえ、身悶えしたくなるんで。
まずは3部構成の前編をどうぞ。

『EVA-ファーム』前編

第1章.主都、来訪

 「ここ……だよな?」

 彼が住んでいた村から、 陸蒸気に揺られて6時間ほどの場所に、その街はあった。

 駅のプラットホームでもの珍しげにあたりをキョロキョロと見回していた少年は、周囲の好奇の視線が自分に集まっていることを感じて顔を赤らめた。

 (なにやってんだ、僕は……。これじゃあ、田舎から来たばかりのおのぼりさんじゃないか)

 実際のところ、その認識はあながち外れていないだけに、余計に気恥ずかしくなる。あわてて傍らに置いた古ぼけたトランクを持ち上げると、早足に改札を出て、指定された待ち合わせの場所に向った。

 「……遅いなぁ、迎えの人」

 炎天下で待つこと半時間あまり。迎えにくるはずの女性はいっこうに姿を見せない。

 「やっぱり来るんじゃなかったなぁ」

 少年は早くもここへ来たことを後悔しつつつあった。
 息子の自分を親戚の家に預けたまま、5年間音信不通だった父からの便り。

 「第三新帝都ニ来イ ゲンドウ」

 簡潔過ぎるほどの短いメッセージ。
 一緒に添えられていた列車のチケットと、父の部下らしい女性からの迎えに来るというメッセージがなければ、彼とてここに来ようとは思わなかったろう。
 もっとも、添えられていた写真に写るそのおねーさんが美人だったから、来る気になったというあたり、彼もまあ、健全な男子中学生というコトだ。

 さらにいえば、この街-第三新帝都は、重要遺跡保護都市である。遺跡から発見された未知の技術により、EVAというモンスターが再生され、さまざまな研究が進んでいるという話は有名だ。
 入市制限があるこの街に、ド田舎の平凡な少年が堂々と入れる機会なぞそうあるものではない。
 少年としても、父に言いたいことのひとつも無いわけではないし……。

 「ごめ~ん、お・待・た・せ」

 駅前のベンチにすわってもの思いにふけっていた少年は、突然声をかけられて慌てて立ち上がった。知らぬ間に迎えが来ていたらしい。

 「碇シンジくんね? 私は葛城ミサト。よろしくね」

 目の前で微笑んでいる20代後半と思しき美女の顔は、確かに父の手紙に同封されていた白黒写真と同じものだ。しかし……。
 彼女の背後にある乗り物はいったいなんなのだろう?

 「ホント、ごめんね。遅れちゃって」
 「それはいいんですけど……あのぅ、ソレ何なんです、葛城さん?」
 「ミサトでいいわよ。ああ、コレ? 人力車よ。知らないの?」
 「いえ、それくらいは知ってますけど……」
 
 どうやらミサトの自家用車らしいそれは、黒のフレームに朱塗りの日除け
天蓋のついたなかなかりっぱなものだった。問題はそれを引っ張っているモ
ノのほうだ。
 形状はまさに車輪そのもので大きさは直径1.5メートルぐらい。ただ、その
輪の中央に顔らしきものがあってあまつさえ、その口にあたる部分からは舌
らしきものをデローンと垂らしているのだ。よく見るとその体表には細かい
ウロコのようなもので覆われているの見てとれる。

 「あ、そうか。この子のことね……これがEVAよ」
 「はい!?」

 聞き間違えかと思い呆然としているシンジに構わず、話を続けるミサト。

 「ディスクタイプのEVAなかでもタイヤンって種族なの。いや~ディスクタイプってなかなか発掘されないから、高くってね。この子も実は50回月賦なの。大飯食らいだけど、その分けっこう速いわよ」
 「い、生き物なんですか?」
 「ん~そうね。物食べるし、成長しておっきくなるし、疲れると眠るし、ほとんど生き物って言って、まちがいないと思うわ」
 「へ、へぇ~コレがEVAなんですね。初めて見たなぁ」

 確かEVAはこの第三新帝都が誇る最高機密ではなかったのか!?
 それがこんな街中で人力車引っ張ってていーのだろうか?

 そんな疑問を抱かないでもないシンジだが、ミサトの次の一言でさらに混乱する。

 「なに言ってんのよ。シンジくん、さっきからいっぱいEVAを見てるじゃない」
 「へ!?」

 ミサトの指差すほうには駅前の乗合馬車しかない。いや、馬の代わりに犬のような動物が2頭、車を引いているのが多少珍しいが……。

 「あれって狼かなんかじゃないんですか!?」
 「角のある青い狼なんて、いると思う? あれもEVAよ」

 さらに目を転じればカンガルーとウサギの合いの子のような生き物が、〒マークのついた鞄を肩にかけ、郵便局のほうへと走っていく。

 「もしかして……」
 「そ、あれもEVA」

 混乱している様子のシンジを見て、エヘヘッと存外子供っぽい笑いを漏らすミサト。

 「ミサトさん、EVAっていったい何なんですか?」
 「んーそうね、口で説明するより実際見てもらったほうが早いかな。シンジくん、お母様の形見のペンダントは持ってきた?」
 「え? は、はい、いつも身につけてますから」

 慌ててシンジは胸元から皮紐につながれた"それ"を引き出して見せる。
 透明な結晶を勾玉のような形に加工したそれは、シンジが5歳のときに亡くなった母から受け継いだ、数少ない思い出の品だ。どうやら水晶らしいのだが、中に白い核のようなものがあり、不思議な光を放っている。
 チラと確認すると、すぐにミサトは人力(EVA力?)車に乗り込み、シンジを手招きした。

 「ホラ、 乗って。シンジくんにEVAの"生まれる"ところを見せてあげる」

 遠慮がちにシンジが車に乗ると、ミサトはカチューシャのような頭飾りを懐から取り出して、頭にはめる。 途端に、車は軽快……を通り越して恐いくらいのスピードで走り出した。

 「ど、どこに行くんですか?」
 「EVA神殿。EVAが誕生-いえ、再生する場所よ」

 そこは"神殿"という名称のわりにやたらと絡繰じみた場所だった。
 白髪ながら体格のよい初老の男性がふたりを迎える。

 「ようこそ、EVA神殿へ。おや、葛城くんじゃないか。噂は聞いとるよ。
その少年が碇の息子かね?」
 「ええ、冬月先生」
 「ハハハ、先生はやめてくれ。いまの私はしがないEVA再生神官に過ぎんよ」

 あとでミサトがコッソリ耳うちしてくれたところによると、この冬月という人
は、元凄腕のEVAトレーナーとして有名な人らしい。

 「用意はできとるよ。さぁ、始めようか」
 「ええ。シンジくん、さっきのペンダントをちょっと貸してもらえるかしら?」
 「構いませんけど……何に使うんですか?」
 「大丈夫、壊したりはしないから」

 そのまま、眼前に並んだガラスポッドのひとつにペンダントを入れるミサト。
 背後で冬月がなにがしかの機械をいじると、ペンダントの入ったポッドが徐々に光りだす。やがて光はポッドにつながれたチューブに吸い込まれていき、別のいちばん大きなポッドのなかへ放出される。
 いや、いつのまにか光は実体を持ち始めていた。

 南米の遺跡から出土するような黄金の仮面と、金糸の縫い取りがある白いマント。そしてそれに隠された、1.5メートルほどのなにかに……。

 「こ、これが……」
 「そう、遺跡から発掘された生命石と呼ばれる結晶。そこに刻まれた遺伝情報を読み取って、やはり過去の超文明の遺産であるこの機械で実体化したもの──それがEVA。シンジくん、あなたのEVAよ」
 「え!? 僕のって?」

 慌てて聞き返したシンジには構わず、冬月と話し始めるミサト。

 「どうやらガリタイプのようですね」
 「うむ、他の系統の混じっていない純正のガリ種だな。珍しい」

 会話についていけない様子のシンジの背中を、ミサトが思いきり叩いた。

 「ほら、ちゃんとこの子に名前をつけてあげなくちゃね!」
 「え!? ぼ、僕がですか?」
 「そうよう。今日からシンジくんがこの子を育てるんだから」
 「へ…………」

 一瞬、いや、たっぷり十数秒は停止するシンジの思考回路。

 「やーね、今日から、あなたはここでEVAブリーダーとしての修行を積むんじゃない。あ、言い忘れてた。ブリーダーってのは、競馬とかでいうオーナーと調教師を兼たようなものね。私は、あなたの専属トレーナーを務めるからよろしくね。トレーナーってのは……まぁ、ブリーダーのアシスタントみたいなモンかな」

 ミサトのお気楽な発言も意識の表面を上滑りして、頭に入って来ない。

 「さ、それじゃあ、碇会長……あなたのお父さんのところへ行きましょうか」

 ミサトが次にシンジを連れてきたのは、「EVA闘技協会」と看板が掲げられた巨大な建物の一室だった。一度だけ第二新帝都で見た拳闘会場の選手控え室に似ているが、天井が高く、出入り口もずっと大きい。

 とりあえず、「アダム(始まりの人)」と名づけたガリを背後に従え、部屋に入った二人を赤い色眼鏡の男が迎えた。
 言うまでなく、シンジの父、ゲンドウだ。

 「ひさしぶりだな」

 5年ぶりに会った父は、シンジの記憶にあるままの無口で無愛想な姿のまままったく変わっていなかった。

 「父さん……なんなのさ、僕がブリーダーって!? そんなの聞いてないよ! 父さんはこのために、僕を呼んだの?」
 「そうだ」
 「無理だよ。できっこないよ」
 「説明を受けろ。いやなら帰れ。ただし……」

 不気味な微笑み(と呼んでいいのか、アレは!?)が炸裂する。

 「帰りの旅費は出してやらん。切符は自分で買うんだな」

 その言葉と、何よりゲンドウの笑み(?)の直撃によって心理的ダメージを100ポイントばかり受けるシンジ。
 陸蒸気の切符はかなり高価である。14歳の少年においそれと調達できる金額ではない。

 (自分の子ども相手に……卑劣ね~)
 (だから、陰で「外ン道」なんて呼ばれるのよ)

 ミサトと、ゲンドウの秘書らしき金髪の女性がコソコソと囁きあう。

 「ぐっ……」

 シンジが拳を握りしめ、返答に迷っていたとき、不意に扉からショートカットの若い女性が飛び込んできた。

 「大変です。試合直後のゴーレムが突然暴れだして、対戦相手のブリーダーに怪我を……」

 そこまで彼女が口にしたとき、轟音とともに部屋の東に面した壁が崩れる。
 これが、その暴走ゴーレムとやらの仕業なのだろうということは、シンジにも十分想像がついた。崩れた壁の向こうに巨大な影がたたずんでいたからだ。

 大きい。おそらく体長4メートルは軽くこすだろう。全体のシルエットは人……というかゴリラに似ていたが、その体を構成しているのはどう見て固い岩石のようだ。
 左手にはシンジと同年代くらいの青い髪の少女をつかんでおり、少女の体のあちこちから血がにじんでいる。まだ息はあるようだが……。

 パニック状態のなか、妙に冷静にそんなところまで観察していたシンジのほうに、そのゴーレムが視線を向ける。

 (ヒ……)

 声も出せずに立ちすくむ彼を1対の赤く光る目がねめつけた。やがて、興味がなくなったらしく、シンジから視線を逸らすと、ポイッと左手の中の少女を放り捨てる。

 ほとんど反射的に、少女を受け止めようと身を投げ出す。
 きゃしゃな少女の体も、14歳の非力な少年には結構な重荷である。
 地面に落ちる前に何とか受け止めたものの、支えきれずに尻餅をついてしまうシンジ。

 その動きに再び興味をひかれたのか、ゴーレムがゆっくり近寄ってきた。
 その巨大な掌がふたりのほうへと伸びてくる。

 (ダメだ、殺られる!!)

 シンジが思わず目をつぶった瞬間。

 ──ガシッ!!

 何者かが、ゴーレムの手を受け止めていた。
 "アダム"と名づけられた、シンジのガリだった。

 「まさか、未調教なのに、ブリーダーを守った!?」
 「なぜ……ありえないわ。ヘッドセットも装着していないのに」

 当事者のシンジはちろん、ミサトや女秘書──リツコも驚きを隠せない。

 「いける!!」

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第2章.未知なる友情


 「……知らない天井だ」

 闘技場での騒ぎからおよそ4時間後。
 シンジは当面の住まいにとあてがわれた宿屋の一室で、つかの間のうたた寝から目を覚ましていた。

 あのとき──少女を庇って身を投げ出したシンジにゴーレムのチョップが振りおろされようとしたとき。シンジを救ったのは、今日生まれたばかりのガリタイプのEVA、"アダム"だった。

 ふだんは仮面とマントだけしか見えない、まるでオバケのようなガリの身体から、金色の手足が伸びる。人の手足に酷似した肢体は、ほっそりとしてはいたが、見かけよりずっと強靭で、暴走ゴーレムの拳をやすやすと受け止めた。

 「shigyyyyyyyyyaaaaaa……!!」

 ゴーレムと力比べをしていたのもつかの間、すぐに相手を突き飛ばすと、"アダム"の体全体が光り、一瞬その背に黄金色の鬼神のような幻影が浮かび上がる。いや、幻影などではなく、むしろそれこそが、"彼"の本体だったのかもしれない。
 なぜなら、鬼神のふるう右の拳は、鈍重なゴーレムを一撃で打ち倒し、昏倒させるだけの威力を秘めていたのだから。

 シンジは呆然として、彼-アダムの奮戦ぶりを見ているだけだったが、ふと頭の中に何かが話し掛けてくるような感覚を感じてとまどった。

 <……マ…モ……ル……、シ……ンジ……ヲ…マモ………ル…>

 鉱石ラジオのように雑音交じりの"声"だったが、確かにそう聞き取れた。

 (こ、これは!?)
 「も、もしかして、キミなの!?」

 倒れたゴーレムを踏みつけていた、アダムが振り返る。その顔は無表情な仮面のはずなのに、なぜかシンジには不器用に微笑んでいるかのように見えた。

 「も、もういいよ、アダム。多分そいつ、もう動けないみたいだから」

 シンジの言葉が聞こえたのだろう。アダムは金色の手足を引っ込め、ガリタイプの通常形態に戻った。

 あれから、シンジは、ミサトとともに工房に趣き、リツコ──ゲンドウの秘書かと思ったが、じつはEVA工房の責任者らしい──の説明を受けることになった。
 ちなみに、ケガをしている少女の世話は、あの時駆け込んできたショートカットの女性、マヤが引き受けてくれた。

 「通常、EVAの体には、エントリープラグと呼ばれる小指の爪ほどのカプセルが埋め込んであるわ」

 リツコが嬉々としてふたりに説明する。

 「プラグ内にはブリーダーの髪の毛が入っていて、このヘッドセットを装着することによって、ブリーダーはEVAとの意思伝達──シンクロが可能になるのよ」

 ホワイトボードにマーカーで図を書きながら解説するリツコ。

 「十分に成長し、ブリーダーとのあいだに一定の信頼関係を築いたEVAなら、ヘッドセットなしでも、ある程度ブリーダーの意図を汲んで動いてくれることは確かにあるわ。でも、生まれたてのEVAが、未経験のブリーダーを守るなんて事態は前代未聞よ。よっぽど、シンジくんにブリーダーとしての素質があるか、あるいは……」
 「あるいは、何よ、リツコ」
 「そのガリタイプのEVA-"アダム"がよほど特殊か、ね」

 リツコは内心、その両方だろうと踏んでいる。
 こうして、なし崩し的にシンジはブリーダーになることが決定したのだった。


 コン、コン……

 ベッドの上で、ぼんやりと今日の出来事を反芻していたシンジは、ノックの音にビックリして、飛び起きた。

 「ど、どうぞ」

 思わず声が裏返っている。我ながらカッコ悪い。
 てっきりミサトかと思ったのだが、入って来たのは、あの青い髪の少女だった。

 「…………」
 「あ、キミか……。その……大丈夫?」
 (ああ、何言ってんだ僕は。大丈夫なわけないじゃないか!)

 包帯で巻いた右手を肩から三角巾で吊り、頭にも包帯が巻かれている痛々しい姿だった。

 「……どうして?」
 「え?」
 「どうして私を助けたの?」

 視線を伏せたまま、ぶっきらぼうに問う少女の言葉に戸惑うシンジ。

 「その……ごめん。よく、わからないんだ」
 「そう……」

 かすかにため息をつく少女。それには気づかず、言葉を続けるシンジ。

 「でも……もし、もう一度同じ場面にあっても、きっと同じことをするような気がする」
 「え……」

 少女が驚いたように顔を上げた。正面からそのきれいな紅玉色の瞳を覗き込んでしまい、思わず見とれるシンジ。

 「あの、名前……」

 小首をかしげた少女に、勇気を出して問いかけるシンジ。

 「きみの名前、聞かせてもらえるかなぁ? 」
 「……綾波、レイ」
 「あ、僕は碇シンジ。よろしくね」

 無言のまま向き合うふたり。言葉は無かったが、心なしか暖かい空気がその場に漂った。

 「……私、もう行かなきゃ」

 再び目を伏せるレイ。だが、僅かに頬が赤らんでいるように見えたのは、シンジの錯覚だろうか?

 「あ……そ、そう……」

 気の利いた台詞ひとつ言えない自分をシンジは呪った。

 「それじゃ……その、アリガトウ……」

 今度ははっきり傍目にもわかるほど顔を真っ赤にして、レイは部屋を出て行った。

 「ありがとう……感謝の言葉。養父(あのひと)にも言ったことなかったのに」

 シンジの部屋の扉に背を預けて、レイはひとりごちた。

 「でも、なんだか初めて会ったような気がしない。碇くん……」


 翌日から、シンジの新米ブリーダーとしての生活が始まった。

 「いい? ガリタイプは"力"と"賢さ"、両方のタイプの技を持ってるわ。
 アダムはすでに"魔神パンチ"を習得してるみたいだから、当面は"賢さ"を重点的に伸ばしましょ」

 「仕事(アルバイト)は、能力を上げられるうえに、お金も稼げるの。ただし、割りのいい仕事ほど疲れるから、休息と食事を忘れずにね」

 「修行は、大金がかかるけど飛躍的に能力が上がるし、新しい技を覚えるチャンスだから、無駄にしちゃだめよ」

 若手でも1、2を争うやりてトレーナーと呼ばれるミサトの指導もあってか、みるみる成長していくアダム。もちろん、シンジもさまざまな経験と知識を吸収し、順調に一人前に近づいていく。

 新たな友人もできた。

ボグッ!!!

 「新米。ワシはお前をなぐらにゃ、気がすまへんのや」

 熱い拳だった。だが、殴られた頬より、彼を殴った少年の友人の
 「コイツ、きみのEVAに倒されたゴーレムのブリーダーだったんだ。"フォース" のやつ、いまだ入院中だから……」
 という言葉のほうが心に痛かった。
 彼を殴った少年は鈴原トウジ。シンジ同様ブリーダーらしい。
 その連れは相田ケンスケ。闘技場のアナウンサー見習いだということをあとで知った。

 これまで、うわべだけの無難な付き合いしか知らなかったシンジの目には、自分の感情に率直過ぎるほど率直なトウジという少年は、むしろ好ましいものに映った。
 自分のEVAのことを思って、ケンカできる彼をうらやましいとさえ思った。

 出会いは少々乱暴なものだったが、トウジは鉄拳一発でわだかまりを解いたらしく、まだこの第三新帝都に慣れないシンジの世話を、ケンスケとふたりで何かと焼いてくれる。3人が親友と呼べる仲になるのにそう時間はかからなかった。

 レイの存在もシンジにとって大きかった。
 純血モノリス"リリス"のブリーダーとして、すでにCランクの評価をレイは得ている。闘技場や仕事先などで顔をあわすことも多かったが、ちょっとした暇を見つけては、どちらからともなく会話を交わすようになっていた。

 無口で物静かだが、朝露のようにはかなく、そして美しいレイの微笑を見ることが、いつしかシンジの心の支えにすらなっていた。
 闘技場の待合室にふたりで一緒にいるところを、トウジたちに見られてからかわれたこともある。

 「いやぁ、おふたりさん、相変わらず仲がええのう」
 「ほんと、なんだかイヤ~ンな感じ」

 真っ赤になったシンジを見て、さらにからかう二人。

 「「レイ、僕は今はまだ、しがない新米ブリーダーだけど、いつかは……」」
 「「ええ、待ってます。貴方が一人前になって私を迎えに来てくれるのを」」
 「「レイ!」」
 「「シンジさん!」」

 ガシッと抱き合うふりをするトウジとケンスケ。

 「な、何言ってるんだよ、ふたりとも。綾波が困ってるじゃないか」

 そう言ってふとシンジがレイのほうに目をやると、なんだかレイの視線が虚ろに宙をさ迷っている。どうやら、ふたりが言ったような場面を頭の中で妄想(シミュレート)しているらしい。

 「お、綾波はまんざらやないみたいやで」
 「どうする、シンジ。男の責任とらないとな」

 調子に乗って囃したてるふたり。ほとんど小学生レベルである。

 「な、何を言うのよ」

 ほんのりを頬を赤らめるレイ。予想外のものを見てトウジとケンスケは呆然とする。ちなみに、シンジの場合は、

 (相変わらず、綾波の照れてるところって、可愛いなあ)

 と見とれているのであった(爆)

──ピンポンパンポーン……
──Cランクブリーダーのミス綾波、トレーナーのミス伊吹がお探しです
──至急、EVA待機室までおいでください

 「ひ、非常招集。先に行くから」

 意味不明の言葉を残して足早に立ち去るレイ。

 「…なぁ、シンジ」
 「なに、トウジ?」
 「綾波って、あないな表情もするんやなぁ」
 「ホント、いっつも無表情な娘だと思ってたけど」

 眼鏡をキラリと光らせるケンスケ。

 「ああいう顔なら、商売になるかも」

 彼は写真撮影の趣味を活かして、めぼしい女性ブリーダーの写真をブロマイドにして売り、小遣いを稼いでいるのだ。

 「いやぁ、なんでシンジがあの娘に入れ込むんか、分かったような気がするわ」

 そういって、シンジの肩をこづくトウジ。

 「ホンマ、ワレは幸せモンやのう。カワイイ恋人はおるし、トレーナーはあのミサトさんやし。それに引き換えワシは……イテテテテッ」
 「なんか、言った鈴原!?」

 ギウーーーーーーッ!

 思い切り彼の尻をつねったのは、言わずと知れた、トウジの専属トレーナー、洞木ヒカリである。


 そんな仲間たちに囲まれて、シンジは結構、第三新帝都での生活を謳歌していたのだ。

 そう……。
 "彼女"が来るまでは……。

<to be continued>
-------------------------
<新なかがき>

「EVAファーム」は、置き換えシリーズの中では珍しく、
比較的エヴァ側の雰囲気を残した作品。
 まあ、それでも「置き換え」の域はほとんど出てないのですが。
「モンスターファーム」を元ネタとはしていますが、設定などの
一部にオリジナルの要素を加えて、ゲームを知らなくても
(知らないほうが?)、楽しめる……よう努力はしました(笑)。

過去私が書いたSSの中では、多分、シンジとゲンドウの関係が
一番良好でしょう。「アウフへーベン」や「封神領域エヴァン
ゲリオン」でも、それなりに「漢(おとこ)」を見せますが、
明確に"正義の味方"と言いうるのは、「EVAファーム」の
ゲンドウだけでしょうから。詳細は、後編で。
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テーマ : 新世紀エヴァンゲリオン
ジャンル : アニメ・コミック

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KCA(嵐山之鬼子)

Author:KCA(嵐山之鬼子)
Pixiv、なろう、カクヨムなど色々書いてます。感想などもらえると大変うれしいです。
mail:kcrcm@tkm.att.ne.jp

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