FC2ブログ

『待遇改善を要求する!』上

 かなーり昔に書きかけて、8割方書き終えて止めてたSSを発掘したので、まずは半分掲載。残り半分はの最後の2割を完成させたら載せます。
 一応、異世界アールハインが舞台ですが、これまであまり出していないクラムナード大陸のお話です。人名から予想つくかもしれませんが、登場人物は某ア●リエリーズの主人公たちをイメージしてます。

待遇改善を要求する!』上の巻

 うぅむ、まさかこんなことになるなんてね。

 とある日曜日、公園で行き倒れていたヘンな格好したおねーさんを助けたら、彼女は異世界から来た魔法使いで、助けたお礼をしてくれるって言ったんだ。
 ……そこ! ツッコミどころ満載の発言なのは自分でもわかってるけど、とりあえず納得してほしい。僕だって、最初から彼女が言うことを信じたワケじゃないけど、色々あって信じざるを得なくなったんだから。
 半信半疑──いや、魔法使いか否かじゃなく「お礼」の部分ね、何せこの人、かなりのドジっ娘みたいだし──だったけど、ダメ元で「だったら、僕も魔法使いにしてほしい」って言ってみた。
 そしたら、おねーさん──ジュディさんは、意外にもOKしてくれたんだ。
 ただし、僕がジュディさんに弟子入りするって条件だけど。
 中学を卒業して4月から一応高校入学は決まってたけど、平平凡凡とした退屈な日常には飽き飽きしてたから、即「ぜひ、お願いします、師匠!」って頭を下げたよ。

 翌日、【帰還】の呪文で故郷に戻るジュディさんにくっついて、異世界とやらへ。
 いやぁ、いかにもファンタジーRPGっぽい世界をこの目で見られるとは。それだけでも、コッチ来た価値があったよ!

 もちろん、ジュディさん──師匠は、約束を違えることなくちゃんと僕を弟子にしてくれた。
 実は、師匠ってば、この国ではかなり有名な魔術師にして大錬金術師だったみたい。
 い、意外だ。あのドジっぷりからして、駆け出しの新米ってことはないにせよ、せいぜい中堅に手が届く程度の人材かと思ってたよ。そもそ、18、9歳くらいのハイティーンの娘さんにしか見えないし。
 でも、確かに魔法の教え方とかはすごく上手い。
 聞くところによると、すでに3人程弟子を育てて一人前にしたこともあるんだって……ん? て言うか、師匠、本当はいくつなんですか?
 「ふっふっふっ、イイ女には秘密があるものなんだよ~」
 あー、はいはい、わかりました。これ以上、歳の追求はしませんから、そう笑顔のままニラまないでください。

 ともかく、そんなこんなで、僕の異世界における「魔法使いの弟子」ライフが始まったんだ。
 まだ弟子入りしたばかりだからたいしたことは出来ないけど、それでも少しずつ魔法の腕は上達してると思う。先週、ついに【灯明】と【発火】の魔法は使えるようになったしね。
 今週は、そのおさらいに加えて、薬草の作り方(ちなみに、「栽培」じゃなくて「調合」方法のことね)を教わっている。こちらは魔術師というより錬金術師としての基礎の基礎らしいけど。

 でもなぁ…………ふぅ。
 「あ、やっぱり、女の子にされたコトが不満なんだ。でも、このクラムナード大陸では女の子のほうが魔力高いし、実際この国では職業魔術師の8割近くが女性なんだよ? 少しだけいる男性の魔術師は、戦闘に不向きな研究者タイプが大半だしねー」
 いえ、それは最初に説明されたから、ちゃんと納得してます。
 ──まぁ、できれば、お茶に女にする薬を仕込む前に教えてほしかったですけど。 
 「にゃはは、ま、結果オーライだよん。
 じゃあ、掃除とかおさんどんとか家の中の雑用してもらってること? でも、内弟子になるなら、それくらい普通だと思うし……」
 ええ、そうですね。住み込みのお弟子さんとなれば、そういうことやらされることも覚悟はしてました。
 「えっと、お小遣いの額? あ、それとも週に一回しかお休みがないのが嫌なのかな?」
 まさか! 正直今の自分はロクに役に立たない無駄飯食らいなのに、キチンと食べさせてもらったうえ、小遣いまでもらえるなんて好待遇すぎますって。
 それに、生活習慣の違う異世界でまで週休二日を要求したりしませんよ!
 「うーーん、となると……魔法の教え方? も、もしかして、あたしと一緒に暮らすこと自体がイヤってことはない、よね?」
 滅相もない! 師匠の教え方はすごく丁寧でわかりやすいですよ。昔使ってた、こんな立派な杖まで戴きましたし、すごく感謝してます。
 同居人としても、師匠みたく美人で優しいお姉さんと一緒に暮らせるのは大歓迎ですし。
 「あれ、それじゃ、何が不満なの?」
 この姿ですよ!
 どうせなら師匠みたくナイスバディの美少女がよかったのに、なんでこんな10歳くらいの年端もいかない幼女になってるんですか!?
 顔は、まぁ、そこそこ可愛いですけど、胸なんかペッタンコだし……。
 「あ、アハハハハ……ま、まぁ、そのくらいの年齢のほうが覚えが早いんだよ。
 (それに、あたしも、妹が欲しかったし、ね)」
 なんか小声で呟いた理由のほうが本音っぽいんですけど……。
 「の、ノープロブレム! 大丈夫! 4、5年も経てば、あたしみたくバッチリいい女になれるって!」
 このヴィオラ印のシャイニーミルクを成長期に毎日飲んでたら、背だって胸だってすぐ大きくなるから……と力説する師匠の笑顔に負けて、僕は不承不承頷いたんだ。

  * * *  

 「ほほぅ、つまり、お主は、本来は15歳の少年で、なおかつ異世界から来た、というわけか。
 それが、ジュディに秘薬を飲まされてそんな姿になった、と。それはまた災難と言うか何と言うか……」
 苦笑と同情と呆れが等分に入り混じったような複雑な表情で僕……いや、私を見ているのは、ルルナさん。
 かつては私の師匠ジュディさんと同じ先生に師事した、同門の弟子なんだって。
 もっとも、ルルナさんもすでに師の元を出て、現在はとあるマジックアカデミーの教授をしてるらしい──外見的には、中学生くらいの可愛らしい女の子にしか見えないんだけど。天才児っているもんなんだなぁ。
 師匠も、妹が欲しかったんなら、私みたいな元男じゃなくて、どうせなら妹弟子のルルナさんをかわいがればいいのに。
 「──何考えてるかおおよそ見当はつくけど、ルルナさんはあたしより年上だよ。先生の塾に入門したのは、あたしの方がふた月ほど早いけどね」
 ……へ?
 嘘だぁ……って待て待て。師匠からして、どう見ても17、8歳くらいにしか見えないのに、すでに3人の弟子を育てて独立させてることから考えて、少なめに見積もっても20代半ばはいってるはずだよね。
 そうなると、14、5歳にしか見えないルルナさんも……?
 「ホホホ、それ以上は聞かぬが花というヤツじゃ」
 そーいえば、男を女、それも幼女にするような薬が作れるんだから、若返りとかの薬が作れてもおかしくはないのか。
 「付け加えると、フタバちゃんに飲ませた薬の原型は、昔ルルナさんが偶然作ったものなんだよねー」
 「うむ。あの時はなかなか驚いたわえ」
 ぐわ……そうなんだ。
 ん? アレ、同じ薬を作ったってことはもしかして……。
 「ああ、ワシも昔はそなた同様、男じゃったぞ」
 や、やっぱりィ!?
 「でも、ルルナさんの場合、元々男性としてはかなり多めの魔力を持ってたから、女の子になったら、いきなり元宮廷魔術師の先生すら凌駕するほどの膨大な魔力の持ち主になったんだよ~、すごいよねぇ」
 「もっとも、当初はいきなり増えた魔力の制御に随分苦労させられたがのぅ」
 へぇ~。
 「こりゃ、フタバとやら、お主も他人事ではなかろ?」
 う! そうでした。
 「でも、フタバちゃんの場合は、最初は魔術関係はまるっきりの素人だったから、変なクセがついてないぶん、逆に楽かもね」
 「ま、いずれにしても今の段階では精進あるのみじゃ」
 はーーい、諸先輩方に追いつけるよう、頑張りまーす!

 ちなみに、ルルナさんの昔の名前は「ルルーシュ」って言うらしい。
 「どこかの国の廃王子ですか?」って冗談で聞いたら、「うむ、よぅわかったの」って素で返された。
 北方の辺境にあるレーンスラント王国の妾腹の第四王子だったそうな。もっとも、継承権は女になった時、自分から放棄したらしいけど。
 「──マジすか……」
 「うむ、マジぢゃ。ワシの世代の王族に女子がエラく少なかったからの。なまじ、城に帰ってプリンセスなんぞやったら、アッと言う間に政略結婚の道具よ。
 さすがにそれは遠慮したいからのぅ」
 はぁ、王族ってのも楽じゃないんだなぁ。
 「……なぁんて言ってる割に、実はこの人、既婚者なんだけどね~。しかも新婚ホヤホヤ! あぁ、もちろん相手は男性で、ルルナさんがお嫁さんだよ」
 へーへーへー。
 思わず生暖かい目で、ミドルティーンの美少女にしか思えない「人妻」を眺めてしまう。
 「こ、こりゃ、ジュディ! お主こそ、再婚はせぬのか?」
 いぃ!? もしかして、師匠ってバツイチ?
 「別に離婚はしてないわよ~、夫とは死別」
 す、すみません、デリカシーのないこと言っちゃって。
 「ああ、いいわよ、そんなに気にしてないから。もう何年も前の話だし」
 「という割には、旦那の命日には毎年律儀に墓参りしとるのじゃろう?」
 「そ、それは……」
 と、その後も師匠達の若い頃(って言ったら「今でも若いわよッ!」って怒られた)の話を聞くことができた一日でした、まる。

  * * *  

 「ヤッホー! ジュディ、また新しい弟子とったんだって?」
 師匠に言われて、屋敷(日本で言えば7LDKくらいに相当する、結構広めの家なんだ、コレが)の掃除をしている時に、その女性は風のように現れた。
 「あら、珍しい、ヴィオラじゃない。どしたの、わざわざ?」
 はたき片手に、蔵書の整理をしてた師匠が、その女性の顔を見て、驚いたような声を漏らす。
 ああ、この人が師匠の同期のヴィオラさんか。師匠の話では、現在は田舎(まぁ、私達が今住んでる町ライヴも、けっこーな片田舎だけど)に引っ込んで、大規模な農園を経営してるって聞いたけど。
 「あ~、その調子じゃあ、やっぱり忘れてるなー? ほら、来週の頭はエルミナ先生の誕生日でしょ!」
 「! そっか。ゴメンゴメン、すっかり忘れてたわ」
 エルミナ……って、確か師匠たちの先生の名前だよね。
 「ところで、そこで不思議そうな顔してる女の子(推定・弟子?)のコト、紹介して欲しいんだけど?」
 「あっ、ごめんごめん! えっとこの子はフタバ。お察しの通り、あたしの新弟子だよ」
 新弟子て……なんかどこぞの相撲部屋に入ったみたいな言い方だなぁ。
 えー、コホン!
 「初めまして、マスター・ヴィオラ。私は、フタバ・アトリと申します。この度、縁あってマスター・ジュディに師事させていただくことになりました。以後お見知りおきを」
 「へー、礼儀正しい子だねぇ。あ、わたしは、ヴィオラ。ジュディの元同門の出でお友達だよ。それと、フタバちゃん、わたしのことは単にヴィオラでいーよ。実際、錬金術師は半分廃業してるよーなモンだし」
 はぁ、ではヴィオラさん、と。
 ──師匠のご友人の方は、なんて言うか皆さん気さくですね。私、魔術師とか錬金術師って、もっと気難しいカタブツ揃いだって思ってましたよ。
 「ん~、どうだろう? 確かにそーゆー人もいるけど……」
 「エルミナ先生も、どっちかって言うと、お行儀にはうるさい方かな」
 「でも、わたしらの一番上の姉弟子がアレだから、ねぇ?」
 「塾の雰囲気が、ねぇ?」
 おふたりの話を聞く限りでは、どうやらエルミナ先生には破天荒な一番弟子さんがいて、その人のおかげでエルミナ神秘学講義館(塾の名前らしい)は、よく言えば自由闊達、悪く言うと魔法使いとしては破天荒な人材ばかりが育ったみたいだ。
 あ!
 そう言えば、前々から気になってたんですけど、「ジュディ」や「ヴィオラ」っておふたりのファーストネーム……というかパーソナルネームですよね。
 「うん、そーだけど?」
 「まぁね。正確には、あたしはジュディア・ファールトゥナ、ヴィオラはヴィオレッタ・プラテネスってのがフルネームだけど」
 それでですね、コチラと違って、私というか「僕」が住んでた国では、ファミリーネーム+パーソナルネームって順で表記するのが普通だったんですよ。
 「ええっ、そーなの?」 
 ええ、そうなんです。つまり、フタバって私のファミリーネームなんですよ。
 「あちゃ~、弟子にしてひと月あまりが過ぎて初めて判明する衝撃の事実」
 すみません、なかなか言う機会がなくて。
 「そっかそっかー、じゃあ、これからはアトリちゃんて呼んだほうがいいのかな?」
 そうしていただければ。私としてもその方がより親近感が湧きますし。
 (それに師匠たちを名前で呼んでおいて、自分だけ苗字ってのも、ねぇ?)
 「ハッハッハ~、いやぁ、これもわたしが訪ねてきたおかげかな?」
 まぁ……そうと言えないこともないかも。ヴィオラさんにフルネームで自己紹介したからこそ、この話題を思いついたわけだし。
 「うんうん、善きかな善きかな……」
 師匠もかなり楽天的で明るい人だけど、ヴィオラさんは輪をかけて(ほとんど脳天気に近いレベルで)明るく無邪気な女性だなぁ。
 この時の私はそう思ってたんだ(かなりあとで、それが大間違いだって気づくけど)。

 「で、アトリちゃんとのご挨拶が一段落したから、唐突に話題を戻すけど、ジュディ、エルミナ先生の誕生日どうするの? 来週の頭だから、もう3日しかないよ?」
 「う! とは言え、市販の品を買って持っていっても喜ぶ人じゃないからなぁ……」
 師匠が頭を抱える。
 個性派揃いとはいえ、いずれ劣らぬ優れた魔術師&錬金術師を輩出している(現在は半ば引退したというヴィオラさんさえ、即座に王都の魔法アカデミーで講師が座学・実技とも務まるレベルらしい)一門の先生が凡才であろうはずもない。
 人によっては「金碧の大賢者」(左右の眼の色が違ういわゆるオッドアイなんだそうな)とも「錬魔の女神」とも讃えられるエルミナ先生は、元来物欲に乏しく、またその地位と身分から、当然ながら金銭面での不自由もないらしい。
 だから、プレゼントは各々が趣向をこらして作ったものを贈るのが慣例なんだけど……今年は、異世界(地球)へ転移したり、私が弟子入りしたりしたから、ついウッカリ忘れてたんだとか。
 うーん、師匠のドジっぷりは否定できないけど、一部は私にも責任があるし、責められないなぁ。
 「じゃあさ、ジュディ、こんなのはどーかな?」(ボソボソボソ)
 「ふむふむ……! ナイスアイデアよ、ヴィオラ、それでいきましょう!」
 あ、この声からして、なんか師匠のスイッチが入ったみたい。嫌な予感がするなぁ。
 「だ~いじょーぶ。アトリちゃん、貴女なら出来る、いえ、貴女にしか出来ないことをしてもらうだけだから!」
 ますます嫌な予感しかしないんですけど……抗議しても無駄なんだろーなぁ。
 師匠はもとより、ヴィオラさんも、こういう悪ノリには喜んでつきあうタチだろうし。ハァ……。
 そして、その予感の通り、それからのエルミナ先生の誕生日までの丸3日、「実験」につきあった私は散々なメに遭ったのだった。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

KCA(嵐山之鬼子)

Author:KCA(嵐山之鬼子)
Pixiv、なろう、カクヨムなど色々書いてます。感想などもらえると大変うれしいです。
mail:kcrcm@tkm.att.ne.jp

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード