『美少女JCの家庭教師になったけど何か質問ある?』(上)

以前なら、某立場交換スレで連載していたであろう作品。書きかけですが、とりあえず序盤の部分を投下してみます。
それとピクシヴの方で以前言ってた艦これ物(大井っちに躾られた提督が北上さんになっちゃうやつ)のダイジェストじゃない正規版を載せてますので、気になる方はご覧ください。


『美少女JCの家庭教師になったけど何か質問ある?』

-01-

 六原豪(ろくはら・ごう)が、そのバイトを見つけたのは、一般的なアルバイト情報誌などではなく、大学生協の脇に設けられている掲示板の一角だった。
 中学生に対する家庭教師の依頼で、「大学1・2回生の男子」という条件は割と普通だが、それ以外に「身長165センチ以下、体重52キロ以下」という条件が付加されていたのが目を惹いたのだ。
 少々不思議な条件だが、週2回ペースで1回につき2時間程度で5000円というのは、なかなかおいしいバイトのように思えた。
 幸い(?)にして豪の身長は現在164センチで、すでに19歳だしこれ以上伸びることも(遺憾ながら)あるまい。体重もたぶん制限ギリギリくらいだったはずだ。
 大学入学を果たしてひと月余りが経過し、そろそろキャンパスライフにも慣れてきた豪だったが、友人達との付き合いで大学生は色々と物入りだということを痛感していた。
 自宅生だし、親から昼食代を兼ねた小遣いを月1万円もらってはいるのだが、それではとても足りない。かといって、これ以上、親の(それほど太くもないであろう)脛を齧るのもためらわれたので、割のいいバイトを探していたところで、ある意味、渡りに船だったのだ。

 大学の生活課で聞いた連絡先に電話すると、すぐに面接して決めるという流れになり、翌日、入学式に着ていった一張羅のブレザー姿で、くだんの家を訪ねた。
 多少は予測していたが、その家がお屋敷・豪邸と言っていい規模の大きさ(たぶん敷地面積は高校のグラウンドくらいありそうだ)というのは、さすがに予想を超えていた。
 「キミが六原くんかね。私が、この家の主の佐倉宗治郎(さくら・そうじろう)だ」
 ──さらに、その家の当主にして雇い主(予定)が、某任侠ゲーの主役をリアル化したような威厳と威圧感を兼ね備えた強面(ようぼう)だというのも。
 「は、はい、初めまして。よろしくお願いします」
 内心びびりつつも、懸命に自制心を発揮して挨拶する豪。
 「あら、今どきの学生にしては礼儀正しいのね」
 当主の奥さんらしき30代半ばの女性も、上品で綺麗だが、凛とした雰囲気と鮮やかな緋牡丹柄の着物を着ているせいか、どうも極妻っぽく見えてしまう。
 「──すみません、六原さん。お父様もお母様も、初対面の方を威圧するのは止めてくださいまし」
 豪の顔色が良くないことを見てとったのか、当主の斜め後ろに立っていた、12、3歳くらいの少女が、申し訳なさそうに頭を軽く下げた。
 この少女がおそらく、豪が(採用されれば)教えることになるこの家のひとり娘だろう。
 僅かにウェーブのかかったダークブラウンの髪を背の半ばまで伸ばし、目力の強い黒い瞳が印象的な娘だった。色白で母とよく似た容貌の美少女だが、中学1年生の女子にしては背が高く、小柄な豪とほとんど目線が変わりない。
 薄桃色で小花模様を散らした膝丈のスリップドレスの上にピンクのカーディガンを羽織っており、清楚なお嬢さんといった趣きだ。
 (──いや、実際、本物のお嬢様だから当然か)
 頭の片隅でそんなことを考えていると、少女本人が豪に向かって挨拶してきた。
 「初めまして、六原豪さん。わたくし、佐倉家の長女の花梨(かりん)です。私立逢坂聖神女学院の中等部に通っております」
 背丈や顔つきもそうだが、態度や雰囲気も大人びており、とても中一とは思えない。
 「これは、どうもご丁寧に。すでにご存じのようですが、六原豪と言います。この春から坂大文学部に入った一回生です」
 あまり女性慣れしていない(無論、恋人ができたこともない!)豪としては、“年下の女の子”とどういう風に接していいかよくわからなかったので、無難によそ行きの言葉遣いで応対する。
 それが逆に良かったのだろうか。花梨や宗治郎といくつか言葉を交わした結果、その場で採用が決まり、2日後から授業を始めることになった。


-02-

 そうして始まった豪の家庭教師(アルバイト)生活だったが、名家(佐倉家は元華族の流れを汲む家系で現在も大地主だ)の子女を教えるということで、最初は色々緊張していたものの、さほど時間をおかずに慣れた。
 これは、教え子の花梨がよくできた子で指導がスムーズに進んだということと、豪の(名前に反してやや小心ながら)礼儀正しいところが佐倉夫妻に評価されたという2点が大きいだろう。
 初顔合わせから2ヵ月あまりが経過した現在──7月半ばともなると、花梨からは親戚のお兄ちゃん、佐原夫妻からは甥っ子のような扱いを受けるほどフランクな関係になっていた。
 そこで豪が調子に乗るようなら台無しだったろうが、彼はよく言えば律儀、悪く言うと小市民な性格だったため、ある程度打ち解けた言葉遣いや態度にはなりつつも、決して家庭教師としての本分は疎かにしなかった。
 そこがまた佐原夫妻からの高評価を得るという正の循環が起き、最近では子煩悩な宗治郎氏が「ふむ、豪くんなら花梨の婿に迎えるのも悪くないな」と漏らすほどで、妻の華蓮(かれん)夫人などは既に半ば義息(ないし娘の許婚)扱いである。
 周囲の思惑はともかく、本人達──豪と花梨の関係はどうだったのかと言えば、これはなかなか一言で表すのは難しい。
 「家庭教師と教え子」であることは確かだが、それだけで完結するほど他人行儀ではなく、さりとて「兄と妹」というには未だ少し距離が遠い。
 花梨が大人びた美少女で、豪もそれなりに整った顔立ちをしているので、並んで歩いていれば傍目からは(豪が童顔気味なこともあいまって)“お似合いの高校生カップル”に見えるのかもしれないが、現時点ではどちらも恋愛や愛慕と呼べる感情を持ってはいなかった。
 とは言え、両者間の距離が徐々に縮んでいることは確かで、そんな中で豪も花梨の本性……と言うか被っている猫の大きさについては、おおよそ理解するに至っていた。

 「──ホント、初めて会った時は、「これが真性(ほんもの)のお嬢様か!」って、ちょっと感動したんだけどなぁ」
 勉強の合間の休憩(ティータイム)に、華蓮夫人が持って来てくれた紅茶とモンブランを有り難くいただきつつ、わざとらしく豪は溜息をつく。
 「あらあら、もしかしてぇ、豪センセの夢、壊しちゃったかしらぁ?」
 こちらも芝居気たっぷりにファサァと髪をかき上げつつ、ニハハと茶目っ気たっぷりに笑って見せる花梨。
 そう、清楚可憐なお嬢様というのは表向きの姿、実際は意外にアクティブな御転婆娘だったりするのだ。
 無論、家の躾の御蔭もあって、その気になれば「非の打ちどころのない良家のお嬢さん」としての言動を演じることはできる。
 できるが……それは虎かライオンなみに巨大な猫をカブっているが故で、本人の本来の嗜好は、恋愛系少女漫画よりバトル物の少年漫画、枕草子や万葉集などの古典文学より異世界チート系ラノベやアニメ、乙女ゲーより格闘ゲームなんかを好むタイプだったりする。
 「服装(ファッション)もねー、ホントはアポロキャップにヘソ出しタンクトップ&ショートパンツとかのラフな格好がしたいんだけど……」
 両親が喜々として買ってくるヒラヒラ&ふわふわのフリルとレースがてんこ盛りの少女趣味な衣装は、彼女の好みから120度くらい違うらしい。
 「それ、華蓮さんとか宗治郎さんに言ったらひっくり返るからね」
 「わかってるって。お父さん達の夢を壊すような真似は──少なくとも高校卒業するまでは──大っぴらにはしないつもりだし」
 せめて髪の毛くらいはショートにしたいんだけど、とボヤく花梨。
 「せっかく綺麗な髪なのにもったいない。俺が花梨くんの立場だったら、多少大変でも絶対切らないと思うけどなぁ」
 男目線でつい、そんなことを言ってしまう豪だったが……。
 「ふぅん……豪センセ、ロングヘアな女の子が好みなんだぁ」
 いつになく艶っぽい流し目で視線を向けられて、内心焦る豪。
 「あー、まー、その……なんだ。やっぱメインヒロイン系の黒髪ロングストレートは男の憧れだろ?」
 とりあえず無難な一般論に逃げる豪(本当はそれだけでもないのだが)。この程度の馬鹿話ができるくらいには、親しくなっているのだ。
 「あたしは黒っていうより焦げ茶だし、完全にストレートってわけでもないけどねぇ」
 「メインヒロインというより隠れボーイッシュ属性だと思うし」と、微妙にヲタっぽい自己評価を、花梨は下す。

 「ところで豪センセ、ちょっと提案があるんだけどぉ……」
 花梨いわく、今度の期末試験でどれかひとつでも満点を取ったら、ある“お願い”を聞いてほしいというのだ。
 「いや、それ、俺にメリットなくない?」
 「じゃあ、もしひとつも取れなかったら、あたしの学校の友達を紹介してあげるってのは、どぉ?」
 お嬢様学校として名高い逢坂聖神女学園の生徒とお知り合いになれるというのは、文言だけ聞けば魅力的だが……。
 「花梨くんの学友ってことは中学生だろ? 俺、さすがにロリコン呼ばわりされたくはないからなぁ」
 あまり良い餌にはならなかったようだ。
 「えーっ、残念……」
 そう言う花梨の顔が本当に残念そうだったので、(密かに妹分に大甘な)豪は「仕方ないなぁ」と苦笑して花梨の提案を受け入れる。
 「いいよ、その代わりひとつじゃなくてふたつだ」
 「へ?」
 「ふたつ、100点取れたら、俺にできる範囲で花梨くんのお願いを聞いてあげるよ」
 あくまでできる範囲でね、と釘を刺しておくことも忘れない。
 「だーいじょーぶ、お願いしたいのは、ちゃんと先生にできるコトだから♪」
 マンガならルンルンという擬態語が書き込まれていそうなほど上機嫌になった花梨を見て、「こりゃ、早まったかな」と頭をかく豪。

 とは言え、それ以降も花梨に特に変わった様子(寝食や雑談の時間も惜しんでガリ勉するとか)は見受けられなかったので、豪も油断していたのだが……。
 「えっへん、どうよ!」
 花梨が見せるテストの回答用紙2枚には、確かに赤で100と記されている。もちろん、解答欄にもすべて〇がついていた。
 「う、うーん、教え子が頑張ったことは素直に褒めるべきなんだろうけど、欲望(モノ)で釣ったみたいで、家庭教師としては複雑な気分」
 とは言え、豪も今更「やっぱアレなしね」と言う気はない。
 (さぁ、何が望みだ。お金とか物ってことはないと思うけど……)
 どこか(ご令嬢にはあまり似つかわしくない場所)に連れて行けというおねだりや、あるいは豪に女装とかの恥ずかしい格好をしろとかいう羞恥系とかを予想していた彼の予想は、残念ながら外れることになる。
 ──いや、ある意味、当たっていたとも言えるのだが。

 花梨の“お願い”は、意外にも(と言うと失礼だが)この年頃の女の子らしいとも言える、かわいらしいモノだった。
 「あのね、ネットで見つけたあるおまじないグッズを、一緒に試してほしいんだぁ」
 上目遣いにそう言われて、「まぁ、そのくらいなら」と軽くOKしたことが、まさかその後の己の人生観を左右するような一大事になろうとは、その時の豪は知る由もなかったのだった。

<つづく>
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