『FFF ~Fantastisch Flugel Frauleins~』(旧題:未来騎士道) その1

 ちょっと最近、ゲームせよラノベにせよ自分が書くSSにせよ、ファンタジーが学園物の二択になってるので、ちょいと目先を変えるべく、昔の書きかけの作品(未来騎士道)を引っ張り出して、微修正してみました。
 タイトルは「ファンタスティック・フリューゲル・フロイラインズ(幻想的な翼の乙女達)」と読むと吉。主人公(移植後)の容姿は名前の通り某小型ロボ娘物の剣士型神姫(を人間大にした姿)を想像してください……あ、さすがに、肩や肘、膝、股関節などは、より人間っぽい感じ(継ぎ目くらいはありそうですが)になってます。
 一応TS物の範疇ですが、そのテのシーンは序盤のみで、正直主人公を「男勝りな女軍人」にしても通用するかも。
 今回載せた分で全体の1割くらい。続きの構想はあるのですが、書けるのはいつになるやら。とりあえず、来週は続きの-05-まで書き上げて載せます。

FFF ~Fantastisch Flugel Frauleins~

-00-

 「最新鋭の筺体を用意するって話だったんだが……」
 鏡の中を覗き込み、思わず茫然と呟いた俺の言葉に、白衣の技術者(正確には技術将校)は反応する。
 「ん? その通り。ソイツは正真正銘最新鋭機さ。なにしろ、次期主力マシントルーパー──の候補として組み上げられた実験用試作で、型式からXナンバーさえ取れてないできたてホヤホヤの代物だよ?」
 「……それって、単に実験台にしたって言いませんか?」
 「気にしない気にしない。ま、とりあえず当面はその筺体(からだ)で生活してよ。
 生体組織を多用してあるから軽いし柔軟だし、ほとんど生身に近い生活を営めるはずだし」
 抗議する暇もなく研究室を追い出された俺は、仕方なく自分の部屋に向かうしかなかった。


-01-

 俺の名はキョウ・ヒコー。こう見えても、汎銀河帝国第8方面軍27大隊に所属する軍人だ。階級は特務中尉。
 地方軍人の三男に生まれ、15歳で軍の幼年学校を卒業して以来、10年間にわたって戦場と軍の宿舎を往復する生活を続けて来た俺にとって、軍人(それも現場職)以外の生き方は想像もつかない。
 いや、正確には、18歳の時、当時のお節介な上官に推薦を受け、無理矢理士官学校に放り込まれて半年間促成コースを受けた経験はあるが、それだってバリバリの軍務関係だったわけだし。
 もっとも、おかげで20代半ばで中尉にまで昇進できたのだから大佐には感謝している。そうでなければ、あまり要領の良くない俺なんて、いまだにせいぜい下士官が関の山だろう。
 とは言え、今の階級に付けたのも、士官学校の適性検査で俺がマシントルーパーに高い適性があることが判明したからだ。
 マシントルーパーとは、文字通り「機械仕掛けの騎兵」だ。帝国でも最新の科学技術の粋を凝らして作られたその筺体(からだ)は、生身の兵士とは一線を画する能力、いや「機能」を示す。
 ただ、筺体だけでは、いかに優秀なAIを用意しても、その戦闘力は一流の兵士には及ばない。真の「精兵」たらしめるためには、然るべき訓練を受けた者の精神体(ゴースト)、平たく言えば魂が「移植」される必要があった。
 ゴーストを抜き取られた身体は冷凍睡眠の要領で保管されている。おかげで、その間は歳も取らない。
 ただし、ゴーストの生身の肉体への出し入れは気軽に行えるものではないので、原則的に一度マシントルーパーに選別された者が元に戻れるのは、退役時か、戦闘等で筺体が修復不能なまでに破損した場合のみだ。
 俺の場合は後者だった。だが、まだまだ戦場に未練があった俺と熟練兵を手放したくない軍の思惑が一致し、俺のゴーストは「最新鋭機への移植」を条件に壊れかけの筺体から……この、パッと見、ハイティーンの少女にしか見えない試作機へ移植されたワケだ。

 マシントルーパーという存在自体、技術の進歩に伴い、年々小型化が進み、俺が先日まで「乗って」いた現在の制式機は、身長2メートル強、重量も300キロ台までコンパクト化されていた。
 外見的にも、古典的電子ゲームに登場するバーチャロイドやキャストに近いレベルで「人間化」が進んだおかげで、基地内で普通(なまみ)の兵士と肩を並べて馬鹿話したり、酒飲んだり(もっとも、筺体はアルコールでは酔わないが)できるようにはなっていた。

 (しかし、技術の世界は日進月歩だとは言うが、まさかココまで人間に近い外見の筺体が完成──いや、あの技術者の言葉を借りれば「試作」か──されてるとは……)

 その時の俺は、困惑しつつもどこか他人事のように感心していた。
 だが、その後の苦労──外見がうら若い少女にしか見えないという事実と、そこから派生する様々な面倒事(トラブル)、そして予想以上に人間に近い生理機能を、この筺体が備えていることを知っていたら、あんなに安穏とはしていられなかっただろう。


-02-

 「ちょっと貴女! そちらは将校用の官舎よ!」
 自室へと続く廊下を歩いていたところで、不意に背後から若い女性の声に呼びとめられた。
 振りかえると、そこには今の自分(の外観)と同じか1つ2つ年上──18、9歳くらいの眼鏡をかけた若い女性士官が、胸に書類を抱えて立っている。
 糊の効いた真新しい士官用制服を着ているこのお嬢さんは、見たところどうやら士官学校卒業したてのホヤホヤ少尉さんってトコロだろう。
 「──はい、知っています」
 この外観で男とバレるのはいささか気まずいので、とりあえず丁寧語でしゃべっておく。これなら性別による違和感は出にくいだろう。
 「あら、もしかして将校の人に用があるの? でもこんな時間に……ま、まさか「そういう関係」!? で、でも確かに軍人といえどプライベートの「おつきあい」は自由だし……」
 何を誤解したのか顔を赤らめてクネクネしている新米少尉殿を見ているのは、ちょっとおもしろかったが、ヘンに妄想を暴走させると厄介そうなので、黙ってヘッドギアから階級章の入った電子認識票を立体投影して見せる。
 「え!? そ、そのマークは……し、失礼しました、オールベルン大尉!」
 慌ててカチッと踵を合わせて敬礼する様子は、むしろ微笑ましい。
 「構いません。こんなナリですから、将校には見えなかったのでしょう」
 実際、今の俺を見てひと目で将校だと思う人間はまずいまい。
 ハイスクールの女学生がコスプレしてると言うほうが、まだ信憑性があるだろう。
 「は、恐縮です」
 言葉通り、ひどく恐縮した様子を見せる新米少尉にニコリと笑いかける。
 長らく筺体暮らしで「微笑む」なんて行為を実行するのは久しぶりだが、少尉の緊張がややほぐれたところから見て、どうやら上手くやれたようだ。
 「私はこれから半休ですが、あなたはまだ当直のようですね。御苦労さま」
 鷹揚に頷き、社交辞令として彼女をねぎらってから、俺は将校用宿舎の方へと再び足早に歩き出す。
 少し気になることが出来たからだ。

 「オールベルン大尉……素敵な方……」
 そのために、彼女が頬をポーッと赤らめてそんな言葉を漏らしたのも、常人の数倍の集音力を誇る俺の聴覚センサーも拾い損ねた。まぁ、知ったからと言って後のトラブルが回避できたかはいささか疑問だが。

 少尉から十分距離をとったところで、俺は先程の技術将校へと頭部に内蔵された無線で連絡をとる。
 『はい、こちらMTメンテナンスルーム』
 「ヒコー中尉です。フリント大尉に少しお聞きしたいことがあるのですが……」
 質問はふたつ。
 なぜ、俺の階級がひとつ上がっているのか。
 そして、なぜ電子認識票の個人氏名が、ファイユーヴ=オールベルンなどという聞いたこともない名前に変えられているのか。
 『前者については簡単な話だよ。君は先の戦いの功績を認められて昇進したのさ。本来は戦死にも等しい扱いで2階級特進という話もあったんだけど、とりあえず現時点では表向きMIA(作戦行動中の行方不明)として扱われている』
 「なぜです? 確かに筺体は大破しましたが、一応俺は生還しているのに」
 『それが2番目の理由と関係するのさ。さっきも言ったけど、その筺体は最新鋭の技術を惜しげもなく注ぎ込まれた試作実験機だ。もっとも、本当の意味での「試作品」ではなく、その問題点をすべて洗い直して組み上げられた代物だけどね。
 ただ、このプロジェクトには反対者もそれなりに多くてね。いらぬ妨害を避けるためにも、司令部のGOサインが出て量産体勢が整うまで、当面君には別人として勤務してもらうことになっている。
 ……と言うか、その筺体の電子通達にそのあたりの情報はキチンと入れてあるはずなんだけどなぁ』
 ボヤくような大尉の言葉に、慌ててメールフォルダを確認した俺は、確かに今聞いた内容を簡潔に説明する指令書が出ていることに気付いて赤面した。
 「じゃあ、もしかして宿舎も……」
 『うん、α-04ブロックに「オールベルン大尉」の部屋が用意されているはずさ。ヒコー中尉の部屋は現在閉鎖され、私物は別途保管されているよ』
 αブロックはもっぱら女性士官の部屋が並んでいるエリアだ。さっきの新米少尉と宿舎に入る前に呼びとめられて良かったのかもしれない。
 『詳細については、部屋で落ち着いて電子通達に目を通すことをオススメする』
 「わかりました。お手数おかけして申し訳ありません」
 『なんの、いいさ。今後も時々実験に協力してもらうことになるはずだしね』
 軍人と言うより気のいい町工場の技術屋といった印象のフリント大尉は、ニッと笑って通信を切った。

 それから数分後。
 俺は以前の部屋よりも一回り広くて綺麗な「自室」の寝台に腰かけて、電子通達の内容を再確認しながら溜め息をついていた。

◆ファイユーヴ=オールベルン:18歳/Female
 原太陽系火星王国の軍閥の名門オールベルン家の末席に身を連ねる、早熟な天才少女で、14歳で王立士官学校に入り、16歳で首席卒業。
 以後、高機動空中歩兵部隊に配属されて着々と戦果を上げ、17歳で中尉、さらにほんの1月ほど前に大尉に昇進。
 半月前、リファレンドポイントの激戦(俺が「MIA」になった戦いだ)で両手両足(正確には肘及び膝から先)を失い、サイバー化手術を受ける。
 現在はリハビリも兼ねて、このムーンバレー基地に新設された女性だけの空中歩兵部隊の指導教官に一週間後に着任する予定……。

 「──無理があり過ぎるだろう、この設定」
 確かに、マシントルーパーとしての俺は空中機動戦闘を得意としていた。生身の空中歩兵部隊と連携をとることも多かったし、ヒヨッコどもに空戦のイロハを叩き込むくらいなら十分可能だと思う。
 しかし……。
 「俺に、18歳の女の子のフリをしろと言うのか!?」

<つづく>
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