『鎮守府戦線、風強く波高し』エピローグ

 今はこれが精一杯。料理の完成形と調理素材はあるのに、自分の調理技術が足りてない現状が恨めしいです。そのうちリライトするかも。その前に「黒い」部分をちょっとだけ覗かせる番外短編をひとつふたつ書くかもしれませんが。


鎮守府戦線、風強く波高し』エピローグ

 『以上のような経緯をもって、モーレイ海深部探査任務は、2提督による合同作戦によって無事成功。次なる侵攻目標として、キス島周辺海域を進言する。
 なお、作戦に参加した有意識艦は大破2、中破1、小破5ながら、全艦無事に帰投。
 問題の試作型駆逐艦「島風」についてだが……』

 ──バタン!
 「ていとくぅー! 第四艦隊が帰投したよー!」

 執務室のデスクで、しかつめらしい顔つきで上層部への報告書をしたためている山本大佐のもとに、旋風のような勢いでひとりの少女が訪れた。

 「こらこら、ドアはもうちょっと静かに開けなさい。それと、他の娘(こ)たちはどうしたんだ?」
 「遅いから鎮守府前に置いてきちゃった」
 「待て待て! まがりなりにも旗艦が、それはどうかと思うぞ」
 「うそ嘘、ホントは小破した子がいるから、入渠するって。わたしは旗艦だからこそ、提督に報告に来たんだよ……えへへっ♪」
 悪戯っ子のような表情で笑う少女に、仕方のない奴だと苦笑を返す山本。
 職務関連では公正な態度を心がけている彼だが、ちょっとした「事情」もあって、この娘相手だと妹を可愛がる兄の如く無意識に多少甘くなるようだ。
 秘書艦を務める翔鶴もその辺りの「事情」については心得ているので、あまりうるさく言わない。無論、度が過ぎるようだと釘は刺すだろうが……。

 ちなみに、言うまでもなくこの少女は、十日程前まで特別懲罰処分によって「試作型駆逐艦娘」として過ごしていた島風だ。
 もっとも、当時の「島風」しか知らない人間が今のこの少女を見たら、あるいは同一人物とは気付かないかもしれない。
 別段、背丈や体型、顔立ちが大きく変わったわけではないのだが、砂色(サンドベージュ)だったセミロングの髪が、腰までくらいの長さに伸びたうえで、より金色味を帯びた麦藁色(ストローイエロー)に変わっている。
 さらに、服装もより扇情的に変化し、上着の丈が短くなって完全にヘソ出しだし、スカートにいたっては膝上30センチ近くのマイクロミニ丈で、ちょっと早足で歩いただけで下着が見える状態。しかも、その下に履いているのは、黒のTバックショーツだ。
 格好だけではなく、パッと見の雰囲気や性格も、歳相応より落ち着いた印象のあった以前とは逆に、ハイテンションな元気少女といった趣きになっていた。

 「あの時」、当時の第四艦隊を支援すべく、「島風」は“風嶋少佐配下”の電に頭を下げて艦隊を組んでもらい、出撃した。その際、電のほかに小破状態まで復帰していた軽巡洋艦の名取も、ふたりを心配して一緒に来てくれることになったのは嬉しい誤算と言うべきだろう。
 おかげで支援任務自体は成功したのだが、軽巡1、駆逐艦2の水雷戦隊として最小単位での任務はさすがに厳しく、3隻ともボロボロになって帰投することとなったのだ。
 とくに大破状態だった「島風」は、帰ると同時に即入渠となった。ドック入りした船体(からだ)とは別に、本人もフラフラのまま艦娘用特殊浴場に放り込まれた。
 意識朦朧とした状態で実は初めての入渠を経験することとなった「島風」だったが、警告されていた通り特別処置解除期限を過ぎていたせいか、すでにその体質織が完全に変わっていたようで、普通の駆逐艦娘同様、入渠後数時間で完全復活することができた。それは良かったのだが、負傷(艦娘だから損傷と言うべきか?)が治ると同時に、外見も微妙に変化して今の姿へと変わっていたのだ。
 ちなみに、“下”は完全に凹状態となったし、胸はA以上B未満くらいの大きさにまで膨らんでいる。もっとも、本人はすでに覚悟を決めていたため、これで皆に(本当は男のコだと)変な引け目を感じずに済む……と、むしろ喜んでいたようだが。

 鎮守府の書類上は、風嶋一輝少佐は予後不良の病気となって海軍病院で長期療養。また、試作型駆逐艦は、正式に島風の名称で山本大佐のもとに配属されることとなった。
 元風嶋提督配下の艦娘も、本人達の意志を確認したうえで正式に山本艦隊に所属することとなった。結果、艦隊の編成が微妙に変化し、5艦編成だった第三艦隊に名取が加わり、また、第四艦隊は古鷹が予備艦となって、代わりに電が編入。神通は古鷹同様予備艦として、随時各隊をサポートすることが決定している。
 編入に合わせて、電、名取、神通も、島風たちと同じ女子寮に入寮している。部屋割は、軽巡娘ふたりが同室で、荒潮が島風の部屋に移り、代わって姉妹艦である電が響のルームメイトとなった。結果、新顔3人も部屋割の変わった3人も仲良く日々を過ごしているので、問題はないだろう。

 さて、「人」から「艦娘」、「少年」から「少女」へと、立場と存在が変貌することになった島風だが、少なくとも表面上はあまりその事を気にしているようには見えない。
 本人いわく「人間だったの時の記憶は一応あるけど、何年も前に見た映画かドラマのようで、おぼろげで実感がない」らしい。
 「ちゃんとわたしが“わたし”だと実感できるのは、この佐世保に試作艦として赴任して以降だもん。だから、別に今の状態に不満はないですよ?」
 ……と、本人はあっけらかんとしている。
 むしろ、事情を知るかつての先輩かつ現在の上官たる山本のほうが、よほど気にしており、何かにつけて彼女のことを気遣ってくれるほどだ。
 もっとも、完全に艦娘になったことで性格にも多少変化があった島風は、山本のことを兄的存在として素直に慕っており、これ幸いと何かにつけて甘えているようだが。

 「提督~、わたし、今回初めての旗艦がんばったんだから、何かごほうび頂戴」
 「ああっ、島風、ずるーい! てーとくさん、MVPとった夕立も何かほしいっぽい」
 積極的な島風に刺激されたのか、近頃は夕立もワンコロっぽさを増して、山本提督にじゃれついてくるコトが多くなったのは、良かったのか悪かったのか。
 「ふたりとも、提督はまだお仕事中なんだから邪魔しちゃダメだよ」
 「あの……鳳翔さんがお夕飯作って待ってくれてるのです」
 とは言え、良識派の時雨に加えて、控えめながら電もストッパー役に回ってくれるため、現状ではとくに問題はないようだ。
 なお、この場にいない他の駆逐艦娘のうち、響は我関せず派、荒潮はおもしろがって煽る方に回る派だったりする。
 「しょうがないなぁ。ほら、夕立も行こっ」
 「うぅ~、了解っぽい」
 ワイワイ騒ぎながらと執務室を出る4人の駆逐艦娘の背中を微笑ましげに眺める山本提督。
 軍人としてはある意味失格かもしれないが、それで彼女達が気持ちよく戦えるなら、こんなアットホームな雰囲気も悪くない。

 (──がんばれ……そして、これからもよろしく頼む)
 口には出せぬ彼の真情を、傍らに侍る銀髪の秘書だけは理解し、優しく微笑んでいた。

-おしまい-
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No title

完結お疲れ様でした。
島風当人にはハッピーエンドですね。

もし将来リライトするのであれば、『元提督』とその部下だった艦娘がどのように戦ったのか少し気になりますね。

Re: No title

>ユーエスさん

コメントありがとうございます。
そうですね、その戦いの部分は描写するべきかと私も思います。
あと、裏の部分は、表の(一応は)明朗愉快な雰囲気と異なり、
結構アカン感じなので、ソレをどこまで出すべきか……悩み所です。


> 完結お疲れ様でした。
> 島風当人にはハッピーエンドですね。
>
> もし将来リライトするのであれば、『元提督』とその部下だった艦娘がどのように戦ったのか少し気になりますね。

No title

>結構アカン感じ
そこまで仰られると全部見てみたいですけどね。
KCAさんの作品で真っ黒な物って稀ですし。
プロフィール

KCA(嵐山之鬼子)

Author:KCA(嵐山之鬼子)
Pixiv、なろう、カクヨムなど色々書いてます。感想などもらえると大変うれしいです。
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