『鎮守府戦線、風強く波高し』(第二話)

 「やる夫系SS」で、最近のお気に入りは、『太閤立志伝』をベースにした「やる夫の戦国立志伝」シリーズ。
●『やる夫の戦国立志伝』:浪人→足利家家臣→大名ルート
 に始まり、
●『やる夫の戦国立志伝 EVOLVE』:若狭藩の土豪系戦国大名から雄飛
●『やる夫の戦国立志伝 if』:農民→足利家陪臣→織田家家臣そして……
●『やる夫の戦国立志伝異聞』:豊臣秀吉とねねの間の息子が生まれたら
●『やる夫の戦国立志伝 歴史騙り編』:現代から戦国に転生し、加賀藩土豪系大名に
 ──と同じ作者のものが大きく5系列あって、どれも読み応えがあります。『やる夫の戦国立志伝reload』や『やる夫がシド大陸で試されるようです』のようなスピンアウト作品もあって、ファンサービス満点なのですが……唯一最大の欠点は、『EVOLVE』と『if』以外が未完なること。これは、粘着読者からのコメントが続いたことにも原因があるようなのですが……

閑話休題。『艦これ』SSの続きです。つなぎの回。後編は今書いているのですが、ちよっと長くなるのでエピローグと分割するかも。
 ※14/9/24タイトル変更

鎮守府戦線、風強く波高し

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 「さて、部隊における君の立場に関してだが……」
 「島風」の「着任挨拶」を受理した後、山本提督は、今後の待遇について説明する。
 「機密に関わる部分も多いので、すべてを周囲に明かすわけにはいかない。当面、君は「実験試作段階の有意識艦の船魂」として、俺のもとに配属されたことになるので、心得ておいてくれ」
 「了解しました。ですが、いくら実験段階とは言え、船体(からだ)の仕様などを何も知らないのは、さすがに不審に思われないでしょうか?」
 「島風」の疑問に、提督はニヤリと笑った。
 「それは、問題ない。目を閉じて、意識を心の奥底に集中してみたまえ」
 曖昧な表現に首をかしげつつも、素直に上官の指示に従う「島風」。
 「何か、自分自身の他に親しい存在を感じないかい?」
 先ほど同様、何ともはっきりしない内容だったが、不思議なことに、「島風」には、まさにその言葉通りのモノを感じ取ることができた。
 「! あ、あります」
 「よし。その存在に心の中で近付こうと意識するんだ」
 「了解しました」と口にするより早く、「島風」の自我意識は「それ」と重なり、混じり合う。
 「──船体基礎スペック……把握。基本兵装……確認。コンディション……オールグリーン。自己診断プログラム、終了しました」
 瞼を閉じたまま、普段といささか異なるハイトーンかつ平坦な声で、そうつぶやくと、ハッと我に返って、目をしばたたかせる。
 「い、今のは?」
 「成功したようだね。「島風」、君の船体の全長と最大速力を教えてくれ」
 「はい、全長120.5メートル、最大速力は40.37ノットです」
 唐突な提督の問いかけにも、戸惑うことなくスラスラと答える「島風」。
 「航続距離と現在の兵装は?」
 「速度18ノットで6000海里、現在は12.7センチ連装砲と61センチ四連装魚雷を装備しています……って、提督、これは一体!?」
 「簡単にいえば、通常の有意識艦と同様、今の君の意識の一部は、現在建造中のとある駆逐艦の船体と同調している。もう少し慣れれば、至近距離からなら船体動かすことも可能なはずだ」
 どうやら、「人間に艦娘と同等の能力を身に着けさせる」という眉唾物の題目は、デマではなかったらしい。
 「もっとも、船体の方は未だ試験段階で竣工間近……ということになっているし、半月後に竣工しても、いきなり最前線に出す気はないから、安心してくれ」
 「──はい」
 心情的には、「奴ら」と戦うためならむしろ積極的に前線に出たい気もしたが、一方で、自分が「実験サンプル」であること、数値はともかく戦力自体も未知数であることも理解していたので、「島風」は素直に頷いた。

 「さて、本来"人"である君が、ここで有意識艦──艦娘として暮らしていくうえでの注意を、事前にいくつかしておこうか。
 まず、睡眠については、通常の人間と同様、1日6時間程度とっても問題ない。艦娘は作戦行動中は睡眠欲をカットする機能も備わってはいるが、逆に鎮守府にいる間、暇さえあれば居眠りしているような娘(こ)もいるからね」
 確かに、眠そうにしている艦娘を鎮守府内で目撃したような記憶は、おぼろげながらあったので、「島風」は頷く。
 「次に食事について。これも、鎮守府にいるあいだは、皆普通の人間と同じ物を3食食べている」
 お茶碗山盛りの弾薬やボーキサイトの塊りをバリボリ貪り食う……などという荒業にチャレンジしなくていいらしいと知って、ホッと胸を撫で下ろす「島風」。
 「まぁ、装備が大きく破損した場合などは、自己修復が追いつかずに、入渠(ドックいり)して特別な処置を受ける必要もあるが、君の場合は当面その必要もないだろうから安心したまえ」
 「わかりました。それで、あの、提督、おトイレは……」
 「うん、それをこれから説明しようと思ったんだ。艦娘もトイレには行くには行くみたいだが、頻度的には普通の人間より少なめだ。
 食事をして一定時間後に排泄する──というサイクルができているようだから、そのあたりは少し気を配ってくれ」
 「了解しました……じゃなくて、すみません、私、今行きたいんです!」
 少々はしたないかもしれないが、そろそろ尿意が危険領域に突入しつつあったため、顔を赤らめつつ、「島風」は提督に告白した。
 「! あぁ、すまない。そこのドアを開けて廊下に出たすぐ右に、男女兼用の職員用手洗いがあるから、そこを使ってくれ」
 「は、はい。あの、それでは、しばし失礼します!」
 微妙に内股&早歩きで処置室を出て行く「島風」。
 しかし……。
 「きゃあああーーーっ!?」
 1分後、トイレの方角から黄色い悲鳴が聞こえてきた。
 「おっと、しまった。"あのこと"を説明するのを忘れていたな」
 
 * * * 

 「あの、それでは、しばし失礼します!」 
 とりあえずそれだけ言ってから、私は急いで部屋を出てお手洗いに向かいました。
 (う~、提督の前であんなコト口にしちゃうたなんて恥ずかしいよぉ)
 とは言え、若い殿方の前で失禁でもしてしまったら、それこそ目もあてられませんし、仕方がなかったのだと割り切るしかないでしょう。
 職員用おトイレは、男女兼用ということで男性用小用便器と個室がそれぞれふたつずつ並んでいました。
 幸い、中には先客は誰もいなかったため、奥の個室に駆け込み、便座に腰かけます。
 「ふぅ~」
 大丈夫、漏れそうですけど、まだ漏れてはいません。
 念のため個室の鍵が閉まっているのを確認してから、ミニスカートをめくり、少し履き込みの深い白いショーツを下ろしたのですが……。
 「こ、コレって……」
 なぜかその下にさらに黒い革製の下着を履かされていました。
 Tバックという程ではないにせよ、かなり紐に近い面積で、エッチな写真集とかでモデルさんが履かされていた「そういう目的」の下着っぽい感じです。
 ただし、股布(クロッチ)の部分だけは多少布地が多く厚めで、しかも中に何か堅いプラスチックのようなものが当てられています。
 「! も、もしかして、コレ、貞操帯とかいうものなんじゃあ」
 話にしか聞いたことのない器具(?)を連想して戸惑いましたが、幸い鍵とかがかかっているワケではないようなので、このまま脱げば用は足せそうです。
 私はレザーショーツの脇に指を差し込み、おそるおそる引き下ろします。
 すると、何かショーツのクロッチで押さえつけられていたモノがピョコンと飛び出してきました。
 それが何かを理解した瞬間、私の口からは思わず悲鳴が飛び出していました。
 「きゃあああーーーっ!? な、なんで……なんで私にオチ○チンがあるのぉ!?」

 * * * 

 トイレに駆け付けた提督は、半ばパニックに陥っている「島風」をなだめすかして、なんとか落ち着きを取り戻させた。
 「──グスッ……つまり、私は、ホントは男のコで、だから、その……下にツイてるのも当然だ、っておっしゃるんですね」
 「ああ、説明が遅れてすまない。君があまりに自然に女性らしく振る舞うものだから、俺もうっかりそのコトを失念していたようだ」
 半ベソをかいている「島風」の手を引いて元の部屋に戻り、頭を下げる提督。
 「もぅそのコトはいいです。でも、どうして、私、こんな格好をさせられているんですか?」
 自分が本来は「男」だと知らされてショックを受けたものの、提督に潔く謝罪されたため、「島風」もそれ以上は責められない。なので、少し別の方向から質問を投げかけた。
 「無論、機密保持のためだ。有意識艦の船魂がすべて「女性形」であることは知っているな?」
 「はい。だから、"艦娘"なんて呼ばれているんですよね?」
 「その通り。だから、いかに"試作艦"と称していても、「男性形の船魂」がその中に混じっていては目立つし、どこか不審に思われるだろう」
 確かに、理屈としては間違ってはいない。
 「故に君には、これから1ヵ月間は、その格好で女性として暮らしてもらう」
 「そ、そんなこと……私にできるでしょうか?」
 両拳を胸元で合わせ、不安そうに目を潤ませながら、提督を見上げる「島風」。本人は意図していないのだろうが、その可憐な佇まいとあいまって、年上の男性には無性に庇護欲をかきたてられずにはいられない仕草だ。
 「──大丈夫だ。記憶封印処置と同時に施された暗示で、今の君は自分が女性であることに疑問を持たず、ごく自然に振る舞えるだろう」
 思わず抱き寄せたくなる衝動をぐっと堪え、提督は「彼女」の肩に両手を置いて優しく諭した。
 「でも……その……スカートの中とか……」
 「下着の下に拘束具を着用していただろう。あれを着けている限りは、少なくとも下着越しならバレないはずだ。問題は入浴だが、その点は此方で便宜を図ろう。データ確認のためという名目で2日に1回研究所に呼ぶから、そこでシャワーに入ってくれ」
 いろいろ考えてあるらしい。それにそもそも「島風」側に拒否権はないのだ。
 「ぅぅ……わかりました。頑張ります」
 まだ完全には納得がいかない感じではあったものの、「島風」が頷いたので、提督も内心ホッと胸を撫で下ろす。
 軍人としては「佐世保の若鷹」と呼ばれるほどの器量を持つ山本大佐であったが、正直女性の扱いは専門外だ。
 配下の艦娘たちとの交流で、そのヘンも徐々に慣れてはきたものの、基本的に聞きわけがよく精神的にも大人な子の多い彼女らと違い、「泣いている女の子」の相手は流石に手に余る。
 (──って言っても、コイツは本来は男なんだがな)
 半ば無意識に「よしよし」と「島風」の頭を撫でながら、心の中で苦笑する提督。
 もっとも、彼になでなでされて、「えへへ~」と幸せそうに頬を緩めている様子を見ていると、「彼女」が♂だとは(本来の姿を知っている山本ですら)信じ難いのだが。

 * * * 

 「そろそろ落ち着いたかな? では、君の「同僚」たちを紹介しよう」
 提督に連れられて、私は有意識艦待機所と名付けられた施設へとやって来ました。
 待機所と言っても、実質的には出撃中以外の艦娘の生活の場と言ってもよい場所なので、一般職員などには「艦娘女子寮」などと呼ばれているようですが。
 実際、「少し古めの木造アパート」といった外観ながら、そのうちのひとつに足を踏み入れると、内部はきれいに掃除され、随所に花が活けてあったり、可愛らしいぬいぐるみが飾られていたりと、「女子寮」にふさわしい雰囲気が漂っています。

 提督が玄関に置かれた呼鈴(ベル)を鳴らすと、くすんだ紅色の着物の上からかっぽうぎを着た小柄な女性が奥の方から出てきました。
 「あら、提督、ずいぶん遅かったのですね」
 「すまない、鳳翔さん。ちょっとだけ予想外の事があったものでね」
 彼女と気さくに言葉を交わすと、提督はチラと私の方に視線を向けられました。
 (これって……挨拶しろってことだよね)
 「えっと、試作型駆逐艦の「島風」です。これからしばらくの間、こちらでお世話になります。どうぞよろしくお願いします」
 私はペコリと頭を下げました。
 「まぁ、これはご丁寧に。礼儀正しいお嬢さんですね。私は、鳳翔型1番艦「鳳翔」です。出撃時以外は、こちらの寮母のようなことをさせていただいてます」
 ニコッと優しく笑いかけてくださる鳳翔さんは、外見年齢こそ若い(たぶん20代半ばくらい?)ものの、なんだか「お母さん」と呼ぶのがピッタリの暖かい雰囲気の女性で、私は少し緊張が解れたような気がしました。
 「今、こちらに何人くらい残ってるかな?」
 提督の問いに、ちょっと考え込む鳳翔さん。
 「そうですね。今遠征中の第二と第三の子たちは省くと……残りは11人ですけど、翔鶴は提督の執務室で書類整理をしているでしょうし、摩耶ちゃんはいつものように裏山で自主トレ、鈴谷ちゃんは酒保でお買い物してるみたいですから……部屋には8人残っていると思いますよ」
 「ふむ……じゃあ、ちょうどいいか。鳳翔さん、悪いんだけど、翔鶴を呼んで来てくれないかな。俺は、「島風」を仮配属する第四艦隊の子たちに声をかけるから」

 そうして、居間に通された私は、まずは6人の艦娘の子たちと、互いに自己紹介することになりました。
 「試作型駆逐艦の「島風」です。佐世保で試験を行うことになったので、これからひと月の間、お世話になります。まだ船体(からだ)も未完成の未熟者ですが、どうかよろしくお願いいたします」
 慣れてきたせいか、この挨拶の口上もだいぶスラスラ言えるようになってきました。

 「古鷹型1番艦「古鷹」です。一応、第四艦隊の旗艦を務めさせていただいています。こちらこそよろしくお願いしますね」
 半袖の白いセーラー服を着た18歳くらいに見えるショートカットの女性──古鷹さんが、礼儀正しく挨拶を返してくださいました。

 「長良型2番艦の五十鈴よ。水雷戦隊の指揮ならお任せ。正規配属じゃないのがちょっと残念だけど……わからないコトがあったら、何でも聞いてちょうだい」
 五十鈴さんは、白と赤の袖無しセーラー服を着た高校生くらいのお姉さんです。ちょっと勝気そうですが、その分、いろいろと頼りになりそうかも。

 「やぁ、僕は白露型2番艦「時雨」さ。これからよろしく」
 「こんにちは~、白露型4番艦「夕立」よ。よろしくね!」
 お揃いの紺地に白襟のセーラー服を着た時雨さんと夕立さんは、姉妹艦なのに随分性格は違うみたい。年は、私と同じか、ひとつくらい上かな?

 「──ズドラーストヴィチェ、暁型2番艦「響」だ。短い間だけど、同じ釜の飯を食う仲だ。よろしく頼むよ」
 外見は私よりひとつふたつ年下に見えるのに、白い長袖セーラー服姿の響さん(ちゃん?)は随分落ち着いた印象の子です。

 「あらあら、それじゃあ私が最後かしら」
 ちょうどその時、紅白の巫女装束姿(ただし袴はミニ丈)の20歳くらいの女性が、居間に入って来ました。
 「翔鶴型航空母艦1番艦の「翔鶴」です。第一艦隊の旗艦で、提督の秘書艦も務めさせていただいます。提督に御用がある時は、ひと声かけてくださいね」
 この方も、何て言うかおっとりしてて優しそうな女性です。鳳翔さんが「お母さん」なら、翔鶴さんは「一番上のお姉ちゃん」って感じでしょうか。

 それにしても……何と言うか、各人方向性は違うものの、皆さん美人美少女揃いです。ひょっとして、提督のシュミでしょうか」
 「──何を考えているか大体わかるが、別にそういう艦(こ)ばかり狙って集めたワケじゃないからな」
 「て、提督ぅ、心を読まないでください!」
 「いや、最後の方、口に出してたぞ」
 「あぅっ!?」
 しまった。「島風」、一生の不覚です。
 「うふふ、「島風」ちゃんも可愛いですよ」
 翔鶴さんがフォローしてくださいますが、グラビアモデルにも滅多にいない程の銀髪美人にそんな風に言われてもフクザツかも。

 とにもかくにも、こうして、私の艦娘(見習)生活が、幕を開けたのでした。


~つづく~
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No title

某やる夫系作者さんのところは完結できたら奇跡ともいえますからねぇ
読者と作者の距離感の問題だと思いますが…

そういえば、艦娘にはいろいろ疑惑がある娘も結構………

Re: No title

>西尾北斗さん
コメントどうもです。

> 某やる夫系作者さんのところは完結できたら奇跡ともいえますからねぇ
> 読者と作者の距離感の問題だと思いますが…
距離感って難しいですね。親しみや一体感があるが故にこじれることも多いですし。


> そういえば、艦娘にはいろいろ疑惑がある娘も結構………
「時雨男の娘説」は聞いたことがあるかも。
プロフィール

KCA(嵐山之鬼子)

Author:KCA(嵐山之鬼子)
Pixiv、なろう、カクヨムなど色々書いてます。感想などもらえると大変うれしいです。
mail:kcrcm@tkm.att.ne.jp

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