『今日からあなたのお嫁さん』

仕事の忙しさやモチベーションその他で、ついブログを放置してしまいましたが、ひと息ついたので更新……と言っても、これまた過去作ですが。


今日からあなたのお嫁さん

Side-Female

 「ちょ、双葉先輩、そんなコト、無理っスよ!」

 あら、どうして?

 「いや、その……だって、俺達、まだ学生ですし」

 クスクス、学生結婚っていい響きだと思わない?

 「えっと、俺、まだ未成年ですよ?」

 ええ、でも18歳でしょ? ご両親の同意も得られたから問題ないわ。

 「な、ナンダッテ~!? いや、嫁さん食わせるほどの金銭的余裕が……」

 大丈夫、ウチの実家から持参金として3000万円ほど持って来たから、大学出るまではこれで十分よ。

 「──そもそも、どうして俺なんスか?」

 いやん、そんなコト、女の口から言わせるつもり?

 「いや、先輩、アンタ、男のはずでしょ? そりゃ、高校時代から下手な女の子よりずっと可愛い顔してましたけど……」

 あ、可愛いって思ってくれてたんだ? 嬉しいなぁ。

 「ま、まぁ、演劇部の公演でも大概ヒロイン役されてましたし……校内に先輩のファンは多かったっスからね。写真部がこっそり舞台上の先輩のピンナップ売りさばいて部費の足しにしてたらしいっスよ?」

 ふーん。ねぇ、清彦くんも買った?

 「……ノーコメントで。(コッソリおかずにしてたなんて言えねー!)
 そ、それはともかく、なんで、今更そんな女装してまで俺の部屋に? そりゃ、確かに高校時代は先輩後輩としてはそれなりに親しい仲でしたけど」

 うん、そして大学でも同じ学部、さらに同じサークルの先輩後輩になったのよね。

 「はぁ。そっスね」

 で、先週の新歓コンパ、覚えてる?

 「ええっと……じ、実は最後の方は酔ってていまいち記憶が」
 あ、やっぱり? でも、翌朝目が覚めた時、わたしと同じ布団に寝てたことは?

 「え!? あ、アレ、先輩だったんスか? 女の人の裸に慌てて部屋を飛び出したんで認識してなかったッス。え、でも、胸とかアソコとか……」

 実は、高校卒業した直後にTS病にかかっちゃってねー。もっとも、わたしとしては願ったりかなったりだったけど。

 「それって、つまり、今の双葉先輩は正真正銘、女の人ってワケっスか!?」
 その通りよ。ちなみに、今の名前は「利明」と書いて「りあ」って読ませてるわ。「双葉りあ」ね。

 ──で、酔った男が、女の人を布団の上に押し倒したら……どうなるかわかるわよね?

 「ははぁーっ、誠に申し訳ないっス(土下座)」

 うふ、いいのよ。アレでわたし自身もふんぎりがついたし。
 でも……乙女の純潔を散らした以上、責任はとってもらうわよ?

 「そ、それってヤッパリ……」

 うん、だから最初に言ったでしょ。「今日からあなたのお嫁さんになります」って。

 「──ちなみに俺に拒否権は?」

 あら、わたしが新妻ではご不満?

 「えぇっと……性格的には俺とウマが合うし、面倒見もいいし、優しいよな。
 外見はいかにも大和撫子って感じで俺の好みにどストライクだし、チラッとみた限り、プロポーションもなかなか良さそうだし。
 オマケにいいとこの坊ちゃん、いや今はお嬢さんか……だから、教養とか礼儀作法とかもしっかりしてる。
 ──あれ、もしかして、断る理由ってない? むしろ、彼女いない歴=年齢の俺にとっては、滅多にない掘り出し物?」

 クスクス……ありがと。

 「うわっ、もしかして、また俺声に出してましたか?」

 ええ、しっかり。それで、結論は出たのかしら?

 「は、はい。(コホン)こんなグダグダな形で申し訳ないっスけど、双葉先輩……いえ、りあさん。俺と結婚してもらえますか?」

 ええ、喜んで、あ・な・た♪


Side-Male

 「よぅ、おまいら、今回のミスキャンパス、誰に投票する?」
 「うーーん、悩むよなぁ。下馬評では3回生の桜守姫あかりさんと2回生の双葉りあさんの一騎打ちかと思われたんだけど、新入生の蒼井ふたばちゃんもかなり有望株なんだよなぁ」
 「外部からの飛び入り参加の木之下二葉さんも、イイよなぁ。さすがは慶聖女学院のおぜうさまって感じだぜ」
 「とは言え、我が大学のミス候補3人が3人とも彼氏持ちなのは、かえずがえすも残念だぜ」
 「バーカ、あれほどの女性達だからこそ、恋人がすぐにできるんだろうが」
 「アハハ、言えてる。それにもしフリーでも、お前なんて鼻にもひっかけてくんねーよ」
 「それでも、夢くらい見たっていいじゃないか! くそぅ、こうなったら、木之下さんにモーションかけるか?」
 「うーん、やめといた方がいいと思うぞ?」

 ……などと言う周囲の下世話な世間話を聞き流しつつ、俺自身は、もちろん自分の婚約者に1票投じた。
 や、たぶん来年の今頃は、「ミス」じゃなくなってるから、このコンテストに出る資格ないだろうし、それなら最後に花を持たせてあげるのもいいかな、と思ったのだ。

 それにしても……と、小さく苦笑する。
 外部生の木之下とか言う娘のことは知らないが、さっき名前が挙がった3人の女性には、ある種の共通点があること、みんなは知らないんだろーなぁ。

 少し長めのボブカットにした栗色の髪をなびかせた弓道部のエースであり、男子のみならず女子からも「お姉さまと呼びたい先輩」として人気の高い女性、桜守姫あかり。

 春に大学に入ったばかりの1年生ながら、この近辺では著名なインディーズバンド「アンドローラ」の美人キーボード兼ボーカル兼作詞担当として知られている、蒼井ふたば。

 そして、一見淑やかな大和撫子風ご令嬢ながら、性格はかなりアクティブな演劇部の看板女優にして、我が最愛のフィアンセたる双葉りあ。

 タイプも生い立ちも異なるこの3人の美女(美少女?)には、さっき言ったとおり、ひとつの共通点があるんだな、コレが。
 ──TS病によって男から女に変わったって言う共通点が。

 りあさんからのまた聞きなんだけど、実はTS病の経験者は、いろいろ難しい問題を抱えていることもあって「被害者友の会」みたいなものに所属しているらしい。
 で、その会合の場で、この3人がたまたま顔を合わせ、また年齢も家も近いということで意気投合したんだそうな。
 年上のふたりがこの大学にいることで、当時高3だった蒼井さんもウチの大学への進学を決めたらしい。

 で、その縁で彼女たちの恋人である男衆──巽先輩、俺、久谷の3人も面識ができた。
 巽先輩には学部が同じということもあって色々世話になってるし、久谷は学部自体は違うけど、まだ教養課程だし同学年ってことでツルむ機会も多い。
 ふたりとも、皮肉抜きでとても「いい人」だから、恋人関連の事情を除いても知り合いになれたのは、ラッキーだと思う。

 それにしても、世間は広いようで狭いねぇ。「100万人にひとり」の発病率の患者が、かなり大きいとはひとつの大学に3人も集うとは。いや、3人目は人為的なものだけど。
 ああ、そういやぁ、もうひとつ共通点があったな。3人とも恋人の名前が「きよひこ」なんだよ。巽先輩は字が違うけど、俺と久谷は漢字まで同じだし。

 「おーい、西音(にしね)くーん!」
 おや、噂をすれば影、巽先輩たちが来たみたいだ。
 「西音君もミスキャンの投票かい?」
 「ええ。先輩たちも?」
 「ああ。俺は今年で卒業だからね。できればもう一度あかりのクイーン姿を見たいなと思って」
 「おっと、それを言うなら、俺の方も、りあさんには最後の機会ですから譲れませんよ?」
 にこやかに火花を散らす(ってのは大げさだが)俺と巽先輩。

 「ふたりとも婚約まで漕ぎつけてるから、いいよなぁ。俺とふたばの場合、まだ恋人止まりだから、下手にミス・キャンパスとかになると、余計な虫が寄って来そうだし……」
 久谷のヤツがションボリしてるけど、お前らだって、巽先輩と同様、家族ぐるみのつきあいのある幼馴染だし、事実上婚約確定なんだろ?
 「まぁ、余程のことがない限りはそうなると思う」
 「それに引き換え、りあさんの実家は金持ちかつ名家だから、色々大変なんだぞ」
 幸い、弟さんがいたから婿養子にはならなくて済むけど」

 「あのお嬢さん、金の苦労とかしたことなさそうだもんなぁ」
 そう言って、久谷のヤツが生温かい目で俺を見る。
 「でも、双葉さんにはいくつもの有名劇団から女優として引きが来てると聞いたけどね」
 巽先輩がとりなすように言ってくれるけど、それはそれで悩みの種なんだよなぁ。

 「確かに、女優という職業は、りあさんには天職だとは思いますけど……そうなると、ますます俺が年下のヒモっぽくなりません?」
 ふたりは顔を見合わせる。
 「それは……」「まぁ、なぁ」
 ちょっとは否定してよ!
 「ヘイヘイ、どーせ甲斐性なしですよー」
 と、俺達を探した女性陣と合流するまで、カフェテラスの隅っこで俺はいじけてたりするのだった。

#以上、「犬耳ッ!」と「案ずるより」(および「カナヅチな妹~魔法の髪飾り~」)との共演でした。
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No title

 リア充爆発しろwww いや、やっぱりこう言う話読むと安心しますわ。

Re: No title

激甘ですよね。うん、我がキャラクターながら、モゲロ(笑顔)!
それでも、こういう話を書いてしまうのは、私の性(SAGA)か……。

>  リア充爆発しろwww いや、やっぱりこう言う話読むと安心しますわ。
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KCA(嵐山之鬼子)

Author:KCA(嵐山之鬼子)
Pixiv、なろう、カクヨムなど色々書いてます。感想などもらえると大変うれしいです。
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