『MHミカミ極楽大作戦!?』02 ~ジャングルはいつも危険がいっぱい(前篇)~

そして、誰得話の2話&3話を掲載です。いまさらだけど、「GS女神」の横島って、自分の書くSSの主人公観にすごく影響与えてるなぁと思ったり。ランスやダーシュとは異なる方向の振りきれ方をするスケベだけど、小心かつ根が善人という……。


 ──前略、オフクロ、オヤジ、元気か?
 ひとり暮らしはいろいろ大変だけど、俺もそこそこ楽しくやってる。
 そうそう、最近はアルバイトで、ハンターを始めたんや。
 最初のころはエラくキツい仕事やと思たけど、
 近ごろはそれなりに慣れて……慣れ……

 「ああぁぁっ、いつまでたっても慣れるかぃっ、こんな仕事ォ!」
 今日も夜の密林に貧乏少年の絶叫がこだまする。


『MHミカミ極楽大作戦!?』02 ~ジャングルはいつも危険がいっぱい(前篇)~


 「だめです、横島さん。そんな大声あげちゃあ、気づかれちゃいますよ~!」
 どう考えても看護婦さんをイメージしたとしか思えない、青いヒーラーの衣裳に身を包んだ少女キヌが、傍らの少年、横島をたしなめる。
 「あ……あぁ、ゴメン、おキヌちゃん」
 さすがに、この心優しい同僚の前で醜態をさらすのはイヤだったのだろう。横島も落ち着きを取り戻して、キヌの方へ向き直る。

 「それにしても、俺達だけでホンマに大丈夫なんかなー?」
 そう、いつもならリーダーとして彼らふたりを引っ張ってくれる、所長の美神の姿はここ、”密林”のベースキャンプには見当たらなかった。 
 今回は、横島とキヌのふたりで大怪鳥イャンクックを狩るために、この密林に来ているのだ。

  *  *  *

 話はちょうど半日ほど前、横島が事務所に顔を出したころに遡る。

 「ちわーっス」
 「遅ーーい!! 横島くん。もうお昼よ!」
 仕事がないときの待機場所である応接間に足を踏み入れた途端、美神のキツい叱責とともに石ころと”もえないゴミ”が飛んでくる。

 「あたた……か、堪忍やーーっ」
 「まぁまぁ、美神さん、今日は予定も入ってないことですし」
 お茶を3人分ティーポットに入れて来たキヌが、美神をなだめた。

 通常、この手の家事はアイルーの小間使いが行う。無論、美神の事務所でも仕事時用の特殊効果のある食事のために、協会の規定ギリギリの5匹のアイルーを雇ってはいる。彼らの作る料理には、食べただけで攻撃力や防御力などが強化される効能が含まれているのだ。
 しかも、アイルー族の料理人は、それぞれが秘伝のスパイスやレシピのようなものを持っているらしく、運がよいと、回復アイテムの効果が上がったり、依頼達成時の報酬がよくなったりする、魔法のように不思議な効果を発揮することすらある。
 ちなみに、横島宅に棲むアイルー、美衣の料理の発揮するスキルは、出現するモンスターが弱めになったり、逃げる時に息切れしなくなったり、回避しやすくなったりと、まことに臆病な横島にふさわしいものだった。

 閑話休題。
 このように、ハンターの家の食事関連は、ふつう雇われたアイルーがとりしきるのだが、キヌは事務所に下宿させてもらっているお礼として、こまごました雑用を自ら進んで行っていた。
 また、よく気のつく性格であり、手先も器用なことから、おキヌの淹れたお茶は、本職であるアイルーたちがうなるほど美味だった。美神、横島両名にとっても待機時間時のお茶はささやかな楽しみとなっているのだ。

 ……とは言え、いくら今日は仕事(狩り)がないからと言って、昼過ぎに出社し、ソファに座り込んでボリボリと蜂蜜菓子をむさぼり食うのもどうかと思うが。

 「しょーがないだろ、今朝は起きてから何も食べてないんやから」
 毎度のことながら、器用に地の文に反論する横島。

 「食べてないって……まさか、アンタ、美衣さんに捨てられたの?」
 「女房に逃げられたダメ亭主みたいな言い方せんでください! そうじゃなくて、多少は俺の方も余裕が出来て来たんで、もう一匹、美衣さんの息子さんを雇うことにしたんスよ。アイルーの里の方にいるらしいんで、いま迎えに行ってもらってます」

 「へぇ、あの横島くんがねぇ……」
 とはいえ、毎日のように狩りに連れ出されているため、横島たちのクエスト経験数自体は初心者としては破格に多い。ハンターとしては貧乏もいいところだが(ただし武具の強化や消耗アイテムのため、初級~中級のハンターは万年金欠なのが普通)、一般人から見れば日々の食事には困らないだけの収入は一応横島も確保している。

 (ん? 初心者……?)
 「ねえ、横島くん、おキヌちゃん。あなたちのHRっていくつだっけ?」

 HR──ハンターランクとは、簡単に言えば、協会公認の狩人の”格”のようなものだ。最初は1から始まり、協会の定めた一定の仕事をこなすことで、1ランクずつ上がっていく。4以上で上級者とみなされる。

 「やだなぁ、美神さん。そんなの1に決まってるじゃないスか」
 無意味に爽やかにキランと歯を光らせながら、親指を立てる横島(ヘタレ)。
 「あ、あのぅ、実は私もまだ1です……」
 対照的に申し訳なさそうに肩をすぼめるキヌ。

 (まったく……)
 容赦なく横島をシバき倒しながら、美神は内心で溜め息をついた。

 美神は当然HR6の腕利きで、請け負えない仕事はないが、逆にあまり上位の仕事だと、随伴者としてもHRの低い者は、協会の規定で連れて行けない。
 (早急にふたりのランク上げをする必要はあるわね。でも……)

 「アンタたち、今日はふたりで仕事行って来なさい」
 しばし考え込んだのち、美神はピッと机の上からふだんは受けないような簡単な仕事”大怪鳥討伐”の依頼書を横島たちに差し出す。

 「そろそろアンタたちふたりも、初心者としての心得は身について来たでしょ。
いつまでもわたしにオンブダッコじゃあ、ハンターとしてカッコがつかないし」
 (それに、こんなチャチな仕事について行くのは、ぶっちゃけめんどいしね)

 見事な本音と建前の使い分けである。
 「そこ! うるさいわよ!!」

 ……貴女までナレーションに突っ込まないでいただきたい。

 「コホン……それはともかく、ふたりとも一応はボスクラスのモンスターと単独で戦ったことはあったわよね?」
 「はぁ、まぁ、ドスファンゴくらいなら……」
 「私は”どすらんぽす”とか言う青いのをヤッつけましたぁ」

 実は、先週から、事務所の仕事がない時期の内職として、素材ツアーだけでなく、依頼目的が”採集”タイプの初級クエストも認められるようになったのである。
 採集タイプの場合、主目的はキノコ狩りや魚釣り、鉱石の納入なので、危険なボスクラスのモンスターと無理に戦う必要はない。もっとも、ボスが出現しないわけではないので、そのまま交戦して倒してしまうハンターも多いのだが……。
 報酬金が無料に近い素材ツアーと比べれば、かなり実入りもいいし、やる気さえあればボスクラスモンスターの素材も手に入る。

 業突く張りな美神としては、破格の気前の良さと言えるだろう。
 無論、こういう事態──ふたりのランク上げを見越しての予行演習だったに違いない……たぶん。

 「そう。なら、ふたりで行けばイャンクックくらい楽勝なはずよ。申請書は私のほうで出しておくから、ふたりとも早速出かけて来なさい」
 「「はーーい」」 
 いまいちやる気のなさのうかがえる横島とキヌの返事を聞いて不安の拭いきれない
美神であった。

  *  *  *

 ……と、言うような経緯から、ふたりは夜の密林に来ているのだ。

 「横島さん、支給品の応急薬は私が9つ持って行っていいですか?」
 「うん、おキヌちゃんはいつもどおり後方支援をしてもらうからね。任せるよ」
 (はぁ、トロピカルな夜の浜辺に女の子とふたりきりや言うのに、何が悲しゅうて、こんな色気のない会話をせねばならんのだ……)
 彼にしては珍しくキリッとした顔つきで受け答えしつつ、心の中の声はいつもどおりの横島だった。

 (とは言え、美神さんならともかく、おキヌちゃんに飛び掛かったら、極悪人やからなぁ……)
 もっとも、年下の後輩に対する一応の気づかいは持っているようだ。

 「ええっ、そんなのダメです! 今回はふたりしかいないんですから、横島さんの負担が大き過ぎますよ。”攻撃力強化”と”防御力強化”の演奏をしたら、私も戦いに参加します!」
 私だって、”どすらんぽす”くらいはひとりで何とかしたんですから、と細腕に力こぶを作って見せる(ほとんどわからなかったが)キヌ。
 「うぅ、おキヌちゃんはエエ娘やなぁ~。それじゃあ任せるけど、無理だけはしないようにね」

 念のため携帯食料で腹ごしらえをしたのち、ふたりはツタを登ってベースキャンプにそびえる断崖をこえたエリアへと入った。 
 「て言うか、いきなりいやがるし」
 洞窟へ繋がるそのエリアには、しっかりオレンジ色の飛竜──正確には大怪鳥の名のとおり鳥竜種の一種──イャンクックが、ウロウロしていた。

 イャンクックは、ハンター仲間のあいだでは新人の登竜門と言われるボスクラスモンスターである。ランポスやその親玉ドスランポスと同じく、分類上は鳥竜種と呼ばれる類いのモンスターだ。
 ただし、ランポスが我々の世界で言う恐竜デイノニクス(『ジュラシック・パーク』で群をなしていたアレを想像していただきたい)のような姿をした肉食爬虫類なのに対して、大きなクチバシと襟巻き状の耳、さらに前肢が”怪鳥”の名にふさわしく翼膜状になっているのが特徴だ。
 体長も7メートル前後から大きな個体だと10メートル以上もある。体当たりやクチバシによる直接攻撃のほかに、炎のブレス(厳密には高熱の液体)を吐き散らすなど、広義の"飛竜"の特徴を一通り備えており、新米ハンターがこの仕事を続けていくうえで、ひとつの壁となるモンスターであった。

 「しかーし、いまの俺はいつもの貧弱な坊やとはひと味違うぜ!」
 先程ほどのツタ登りの際、偶然か故意か横島のほうがあとになって、キヌのスカートの中身をバッチリ堪能することができたため、彼のテンションは上がりまくりである(ただし、直接下着が見えたわけではなく、一応ズロースのようなものは履いていたのだが)。
 彼が太刀使いなら、そのまま気刃斬りができそうな勢いだ。

 「往生せいやぁ!」
 怪鳥の背後からダッシュで駆け寄りつつ、アサシンカリンガを抜き放つ横島。
 「あっ、横島さん、まだ……」
 おキヌが背後で何か叫んでいるが構わず、そのまま切りつける。

 ──ズシャッ!

 いまだ横島たちの気配に気づいていなかったイャンクックに対しては見事な奇襲となり、まともに抜刀斬りが翼に刺さる。その勢いを駆って少々不格好ながら斬り上げから回転斬りまでの6連コンボを決めた……のだが。

 『Queeeeee------!!』

 (アレ、あんまり効いてない?)

 所詮は片手剣使いなので、テンションが高くとも別に攻撃力が上がっているわけでは
ないのである。

 「そ、そういうオチかぁーーーーーーーっ!? イテッイテッイテテテテ……」
 怒った怪鳥のクチバシにものすごい勢いでつつかれる横島。
 「よ、よこしまさはぁ~ん」

 ──はたして、横島達の「はじめてのイャンクック狩り」は、大丈夫なのだろうか?

 <後編につづく>


[わりと適当なモンハン的説明]

・アサシンカリンガ
多くのハンターが最初に扱うであろう初期の片手剣、ハンターカリンガ(鉄製の
大型ナイフと小さな盾)を2段階強化したもの。外見に変化はないものの、
攻撃力は2倍近くに上がっている。……とはいえ、元が元なので、まだまだ
大したことはないのだが。

・ブラッドホルン
楽器であると同時に打撃武器でもある狩猟笛の一種。"ホルン"とは言うものの、
現代の金管楽器のそれではなく、むしろ巨大な角笛に近い形状。 全長は1.5
メートル以上あり、"ブラッド"の名のとおり赤い色をしている。また、発電
する飛竜フルフルの素材から作られているため、雷属性を有する。

・レザーライトシリーズ
店で最初から売っている初級防具のひとつ。名前からわかるとおり、主に獣皮を
利用して作られており、当然防御力は低い。横島は胴鎧の部分はレザーライトS
(同シリーズの上位バージョン)を美神より貸与されているが、それでも防御力は
強化しても合計146とヘロヘロ。ただし、全部揃えることで運搬や採集関連の
特技を発動できる。

・ヒーラーシリーズ
協会(ギルド)の女性看護スタッフが着ている制服の模造品。メ○ソレのリトル
ナースの格好を思い浮かべてもらうと、ちょっと近い。防御力は高くない(強化
しても170)が、広域化というアイテム使用に有利な特技を発動可能。キヌの装備
するこれはすべて美神からの貸与品。素材代+制作費の合計を分割ローンで美神
から買い取ることになっている(従ってキヌもあまり現金は持っていない)。
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