『モンハン・スローライフ ~ロロパエ村初心者ハンター奮戦記~』1

どうも。某動画サイトで「まどか×デモンベイン」なMADを見て、年甲斐もなくうるうるしてしまったKCAです。
やっぱり、「光射す世界に涙を救わぬ正義無し」だよなぁ。
──彼女は女神となったのだ! 「最も旧く、最も新しき神」に、な。

おかげで、先週の仕事その他の微鬱状態から回復できました。
その勢いを駆って新作投下! と言いたいところですが、要望がありましたので、モンハンSS「クイーンに首ったけ」シリーズの続編(ネクストジェネレーション物)を投下。今度は「MHP2G」仕様です。

モンハン・スローライフ ~ロロパエ村初心者ハンター奮戦記~

その1

 力なく踏みつけた足の裏で、砂がザリッと嫌な音を立てる。
 抜けるような晴天から照りつける太陽の猛威は留まることを知らず、疲れ切った彼の身から容赦なく体力を奪って行く。

 ──いったいどうしてこんなところにいると言うのだろうか?

 そんなことを考えて注意力が散漫になっていたせいか、何もないところで砂に足を取られて転んでしまう。

 「ハァハアハア……」

 立ち上がるのも億劫だが、このままここに、ただ倒れていても事態は進展しない。いや、むしろより悪い方に転がるだけだろう。その程度のことがわかるくらいの理性は、彼にもまだ残っていた。
 ゆっくりと身を起こした彼は、だがもはやまともに立ち上がる気力もないのか、ずりずりと四つん這いになったまま進んでいく。

 ……そして、どれほど時間が経ったのか。永劫とも思える苦行の末、ついに彼はとある村の入り口に辿り着き……そこで力尽きた。

 *  *  *

 ──バシャーーーッ!

 「!!」
 う、ウワッ、何事!?
 いきなり頭から水をかけられ、僕はビックリして飛び起きた。
 「あのぅ、ダイジョウブでありますか?」
 地面に尻餅をついたまま、声のする方を見上げると、そこには人間の雌――それも"少女"と呼んで差し支えない年頃の女性が、腰をかがめて心配そうにこちらの様子を伺っていた。
 少女の傍らには、ほぼ空になった水桶がある。先程の水はコレか。
 「う、うん。大丈夫……だと思う、たぶん」
 そう自信なさげに答えたのは、自分で自分の現状が理解できてなかったからだ。
 えーと、確かずっと砂漠を歩いていたような……。
 でも、なんで? 僕は一体何をしようとしていたのだろう?
 と言うか……ここはどこ?
 さらに言うなら…………僕は誰?

 地面に座り込んだまま、ウンウン頭を抱えて百面相している僕のことを気の毒に思ったのか、少女が助け船を出してくれた。
 「なにやらフクザツな事情があるようですが……とりあえず、自分のお家はすぐそこなので、来てほしいであります!」
 朝ご飯をご馳走するであります! と彼女は言ってくれたが、見ず知らずの女性に迷惑をかけるわけにはいかないし、そもそも若い女の子が男をそんな簡単にホイホイ家に招くものじゃないと思う。
 「せっかくですけど」と断わろうと思った瞬間、僕のお腹が「グ~~キュルル~~~」と鳴った。
 そう言えば、この暑さもさることながら、お腹が減り過ぎて倒れたんだっけ……。
 「ほらほら、「若い者がエンリョなんてするもんじゃない!」でありますよ~」
 何やら楽しげな彼女に腕を引かれ、彼女の家まで引っ張られる。
 僕より頭半分小さい身長ながら彼女はけっこうな力持ちで、ほとんど抵抗らしい抵抗もできずに僕は引きずられていくハメになった。

 ――もしかしなくても、今の僕の姿、すごく情けない?
 いやいやいや、ちょっと待った。今はちょっと目が回るほど空腹で力が出ないだけなんだって!
 ……ほ、ホントですヨ?

 村の入り口から歩いて30歩ほどの、正真正銘"近く"の場所にあった彼女の家までの道のりが、とてつもない苦行のように思われたものの、彼女の善意には一片の曇りもない。
 ほどなく僕は、彼女の家の台所で、古代豆入りドッカンスープと焼きたてのジャンボピザをご馳走になっていた。
 「オカワリはいらないでありますか?」
 「い、いえいえ、もう十分です。ご馳走様、そしてありがとうございました」
 空腹には勝てず、夢中で食べていた僕も、お皿の中が空になるころには人心地がついて、ペコリと頭を下げた。
 「フムフム。それで……聞きたいのですが、どうしてあんな場所で行き倒れていたのでありますか?」
 い、行き倒れ……。少々大げさな気もするが、確かにあのまま数時間放置されていたら、熱射病と空腹で死んでいたかもしれない。
 言わばこの娘は僕にとって命の恩人なわけで、こちらの事情を説明するのが筋だろう。でも……。
 僕は一瞬テーブルに視線を落としてから、キッと顔を上げた。
 「あ! 食事代のことを気にしているでありますか? ミズクサイであります。困った時は、お互い様でありますよ~」
 絶妙なタイミングで間を外されて、少々凹む。
 「いや、そうじゃなくて……」
 「ややや、もしかして自分に愛のコクハクでありますか? うーーーん、アナタは悪い人ではなさそうでありますが、自分としてはまずはお友だちから親交を深めたいと……」

 ――あのぅ、もうちょっと人の話を聞いて欲しいんですけど?
 両手を頬に当てて、「ポッ」と顔を赤らめる仕草は、なかなかに愛らしかったが、さすがに僕も、こんな状況下で恋愛沙汰に走るほど脳天気じゃない。
 「いえ、そのぅ……僕、どうやら記憶がないみたいなんです」

 *  *  *

 そして、僕がヴェスパさん(あの女の子のことだ)に拾われた翌日。
 僕は、村の入り口付近にある大きな建物に連れて来られていた。
 「それでは、叔父貴、あとはお願いするであります!」
 「おぅ、任せナ、お嬢」
 ヴェスパさんに「叔父貴」と呼ばれた男性は、30代後半か40代前半といった年格好の、片目にアイパッチをした2メートル近い大男だった。
 すでに若者とは言えない年頃ながら、引き締まった体つきと発達した筋肉、しなやかな身のこなしは、見るからに強そうだ。
 革製の防具を身に着けているところからして、兵隊さんか何かかな? 
 「どんな貧弱な坊やでも、オレの主催するハンター養成キャンプ~促成スパルタ編・地獄の3日間コース~を受けりゃあ、9割方はモノになるサ」
 「……参考までに、聞いておきたいのでありますが、残りの1割はどうなるでありますか?」
 「ん? まぁ、死ぬか再起不能になるか、どっちかかナ」
 果てしなく軽い独特の語尾のアクセントが不安を一層増大させる。
 ――顔も知らない天国の(とは限らないけど)お父さん、お母さん、あなたの息子は今ドキドキするほどピンチです。
 「ああ、それからお嬢、たまには実家に顔出してやりナ。アイツら喜ぶゼ」
 「了解であります!」
 ピッと敬礼をしたヴェスパさんは、ニコニコ笑いながら、僕を隻眼の男性に引渡し、軽やかな足取りで立ち去っていった。

 ♪どなどなど~な~ど~な~

 脳裏で物悲しげなメロディが流れる。何故だろう、市場で売りに出されるプーギーの気分……。
 「おいおい、さっきのはちょっとした冗談だって。別に死ぬほど危険なこたぁしないから、安心しナ」
 よほど僕が不安気な表情をしていたのか、隻眼の男性はバンバンと親しげに僕の肩を叩きながら、そう言ってくれた。
 その言葉にちょっとだけ安堵しながら、僕は昨日のヴェスパさんとのやりとりを思い出していた。

 *  *  *

 「えーーーーっ! それは困りましたねぇ……」
 僕の「記憶がない」という述懐を、彼女は何ら疑うこともなく受け入れてくれた。
 ――いや、僕としては有り難いんだけど、こういう場合、もうちょっと疑うとか怪しむとかするものなんじゃあ……。
 どうやら彼女はよっぽど素直な気性に育てられたらしい。悪い人に騙されないか、ちょっと心配だ。
 「それじゃあ、ご自分が誰かもわからないのでありますか?」
 「ええ、それどころが自分がどんな姿格好をしているのかも……」
 「あ、じゃあこっちに来るであります!」
 ヴェスパさんに手を引かれて、彼女の寝室にある姿見の前に連れて来られた。
 ――いやだから、年頃の女の子が見知らぬ若い男を自分の寝室に簡単に入れるのって、どうかと……。
 もっとも、目をキラキラさせている彼女の様子からは一片の邪気も感じられない。この様子だと大いなるフラグクラッシャーの素質がひしひしと窺える。
 (この村の男性陣も苦労してるんだろうなぁ……)

 しげしげと彼女の姿を眺める。
 女性としては高過ぎず低過ぎない(僕が平均的な体格だとしての話だが)ほどよい身長。全体としてはやや細身だが、15、6歳の年齢のわりには結構大きめの胸。
 烏の濡れ羽色……と呼ぶには、ちょっと赤みが混じっている艶やかな髪は、ピースフルハートと言うヘアスタイルに近いが、前髪が若干短めで彼女のトパーズ色をした切れ長の目がはっきり見える。
 顔だちは年齢もあってまだまだ"可愛い"と言うべきレベルだが、あと2、3年したら"美人"と言う形容が似合うようになるかもしれない。
 そして、気さくで明るく、見知らぬ僕にもこれだけよくしてくれる優しさを持っているのだから、モテないはずがない。

 「ホラホラ、自分ではなく、ご自分の姿を見るでありますよ!」
 と、言ってから、それこそ自分でもワケがわからない事を言ってしまったと思ったのだろう。チョコンと頭を下げて、彼女は自己紹介を口にした。
 「申し遅れました。自分の名はヴェスパ。この村の生まれで、一月ほど前に17歳になったばかりであります! 今後ともヨロシクお願いするであります!!」
 「こ、これはどうもご丁寧に。僕は……えーと」
 「もしかして、ご自分の名前までも思い出せないでありますか?」
 「――面目ない。そうみたいです」 
 頭をかく僕の様子を見て、ヴェスパさんはちょっと首を傾げて何か考え込んでいる様子だ。
 「……呼び名がないと不便でありますね。何か仮初めにでも名前がないと……」
 ジュゲムジュゲム、ゴンザレス、スポポビッチ、アンゴルモア……と、何やら呟いているのって、ひょっとして僕の仮名候補!?
 慌てて、僕は口を挟んだ。
 「ぼ、僕としては、えーと……そう、ノブと名乗りたいと思います」
 頭に浮かんだ適当な名前をとっさにデッチあげる。
 「ノブ、ですか? ちょっと東方風でありますね……うん、ヨイのではないでしょうか」
 彼女のお墨付きももらえたことだし、記憶が戻るまではノブと名乗ることにしよう。うん、よかったよかった……仮名にしてもモケレムベンベとかモケケピロピロなんて名前にならなくて。
 そう考えながら、彼女に再度促されて僕は姿見の前に立ち、鏡を覗き込む。

 そこには……一言で表すと「地味で平凡」な少年の姿が写っていた。
 歳のころは17、8歳。背の高さや体格に関しては、まぁ並といったところ。
 アッシュブロンドと言えば聞こえはいいが、ようは砂色の髪は無造作に肩くらいまでに伸ばされ、ボサボサのまま放置されている。日焼けもあるようだが、若干肌の色が浅黒いのは、南方系の血が混じっているからだろうか?
 容貌のほうも、とりたてて不細工と言うわけではないが、美形とも言い難い、まさに中の中といったところ。真面目で温和そうには見えるので、一部の女性からのウケは多少いいかもしれない、といった程度かな。
 (そりゃあ、ヴェスパさんの反応から、「絶世の美男子」とかそういうのじゃないことは、十分予測してたけどさ……)
 それでも自分の顔──とくに額のあたりを見て、何やら激しい落胆に襲われる。まるで大切な「何か」が失われてしまったような……。
 「? どうかしたでありますか?」
 「い、いえ、何でもないです」
 身に着けているのも平凡な焦げ茶色のシャツとカーゴパンツだった。ポケットなどはついていないようなので、素性のわかりそうな所持品もない。
 「うーん、手詰まりか」
 どうやら自分で思い出す以外に、当面僕の身元を知る方法はないみたいだ。

 「フムフム。そうなると、しばらく暮らす住居が必要になるでありますね」
 う……微妙にヤな予感。まさか、「このままこの家に住むといい」とか言い出すんじゃあ?
 家の広さや様子から見て、ヴェスパさんはどうやらひとり暮しみたいだし、さすがにそこまで甘えるのは、ねぇ。
 「――ピンと来ました! ノブさん、こちらへ!」
 再びヴェスパさんに手を引かれてやって来たのは彼女の家の裏庭にある小屋……と言うには、ちょっとだけ大きな建物。
 「チョット狭いけど、一通りの設備は揃っているであります!」
 「と、とんでもない。十分です」
 彼女の言うとおり、ドアを開けてすぐの部屋にべッドとチェストBOXがあり、その奥には小さなダイニングキッチンまである。手荷物すらないひとり暮しの男としては何ら問題はなかった。
 「そうでありますか? では、あとはお仕事はハンターをやればいいですし……」
 確かにそうだ。働かざるもの食うべからず……って、今何か重大な事をサラッと言いませんでしたか、ヴェスパさん!? 誰が何をやるんですって?
 「? ノブさんが、ハンターを、するでありますよ?」
 何言ってるんだこの人、みたいな目で見るのは止めて下さい。第一ハンターって、アレでしょう? メチャクチャ危険でとってもハードな仕事なんでしょう?
 「ああ、世間ではそんな風にも言われてたりしますけど、ダイジョウブでありますよ」
 ……えーと、もしかして、実態はそれほどでもないのかな?
 「はい、カヨワイ婦女子の自分にでも十分務まるお仕事なのであります!」
 (そ、そっかー、ヴェスパさんでも出来るんなら、何とかなるかも……)
 その時は、そんな風に思って納得したんだけど、僕は忘れていたんだ。
 彼女が、あの細腕で軽々と僕の身体をほとんど持ち上げんばかりに振り回していたことを……。

 *  *  *

 「どうした、坊主? 黙りこくって」
 「い、いえ、何でもないです、はい」
 村の入り口から送迎用ネコタクに揺られて、僕たち――僕と教官(あの隻眼の男性)は、密林と呼ばれるフィールドに来ていた。  

 「よォし。これから"ハンター教習合宿~ハイスピードタイプ・3日間詰め込みコース~"を開始する!」
 「――ハイッ!」
 先刻までとコース名が違いますとかツッコミたかったけど、あえてスルー。
 「本日の予定は、特産キノコ狩り・肉焼き・回復薬調合・黄金魚釣り&鉄鉱石採掘!」
 「ハイッ!」
 ちょっと意外。ハンターって、もっと派手でスリリングなものだと思ってた。
 「オレは口は出すが手は出さん。全部クリアーしたら、最後に"ランポス8頭の討伐"をもって、本日の課題は終了とする!」
 ちょ……いきなりハードルが高くないですか? 記憶喪失だからハッキリ断言できませんけど、僕、いままでこんな大きなナイフを振り回したことも、これで戦ったこともないんですよ?
 「だーいじょうぶ、オマエさんに着せてあるそのハンターシリーズの防具は、レベル5まで強化してある。めったなことじゃあ死にはせんよ。こういうことは習うより慣れろダ」
 あのぅ、それじゃあ、教習合宿の意味がないんじゃあ……。
 「しかし、いくら口で説明されてもわからんモノはわからんヨ。まずは、当たって砕けろサ!」
 砕けたらいけないでしょう、砕けたら……。
 「――ええい、ごちゃごちゃ言うねィ。オマエさん。今日の晩飯抜きでいいのカ? 残念だな、さぞかしヴェスパがフンパツしてくれてるだろうに……」
 ! 
 ま、まぁ、せっかく紹介してくれたヴェスパさんの顔を潰すような真似は出来ないよね、ウン。
 「やります! 僕が乗……じゃなくて、行きます!!」
 「うんうん。若いうちは素直が一番だ」

 ……なんとなく、この教官の性格がつかめてきたけど、すごく嫌な予感しかしないのは何故なんだろう?
 そんなことをボンヤリ考えつつ、僕は即席ハンターとしての第一歩を踏み出したのだった。

<つづく>
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以上。
某牧場RPG風の出だしについては、確かに多少意識しています。
それと、最初にコレを書いた当時は、まだ「ルーンフ●クトリー3」は未発売だったことを追記しておきます。
……ベ、別に深い意味はありませんヨ? まぁ、勘の良い方なら、多分あたりはつけらけれてるでしょうが……。
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