『今日からお姉ちゃん ~Hello, My Sister~』(後編)

イケないゆきちゃんのファンタジっくストーリー(笑)、後編です。



今日からお姉ちゃん ~Hello, My Sister~』(後編)

その4)ターニングポイント

 いろいろ面倒な事情を込みで始まった好実のバースデーパーティだけど、パーティ自体は例年どおり──て言うか例年以上に盛り上がって、主役である好実は大満足だったみたい。
 コレは、やっぱり初めて「お姉ちゃん」ができたことが、うれしかったからだろうなぁ。
 (はぁ……いくら好実ちゃんのためを思ってのこととは言え、その本人を騙しているという事実には、やっぱり罪悪感を抱いてしまいますわね)
 ちなみに、本来のボク──日下部柚樹の行方については、兄さんがトンデモない誤魔化し方をしてくれた。
 いわく、わたくし──高代ゆきは旧家の箱入りお嬢様で、本来は今日もお稽古事があって屋敷を抜け出せなかったんだとか。
 けれど、雄馬さんに誘われたお誕生会にどうしても行きたかったわたくしは、彼のアドバイスで仮病を装って自室にこもってから、こっそり屋敷を抜け出した……らしい。
 ただ、お付きのメイドさんが協力してくれてるとは言え、ゆきが寝てるはずのベッドが空だと露見するとマズいので、変装した柚樹を影武者代わりに置いてきた……って設定なのだとか。
 ──何、その穴だらけのホラ話?

 (もっとも、好実ちゃんは、「すごい、マンガみたーい!」って素直に信じてましたけど……)
 素直で純心なのはとってもいいことですけど、そのまま世間に出た時、簡単に騙されちゃうんじゃないかと、ちょっと心配になりますわね……って、ダメだダメだ。
 「良家のお嬢さん・高代ゆき」の演技を、もう6時間以上続けているせいか、口に出す言葉だけじゃなく、頭の中でもお嬢さんっぽく考えちゃってるよ、ボク。

 「どうかしたの、お姉ちゃん?」
 微妙にシャレになってないコトに気付いたボクが、頭を軽く横に振っていると、好実が声をかけてきた。
 「いえ、何でもありませんよ、好実ちゃん」
 ちょっと心配そうな妹に、反射的にニッコリ微笑んで見せちゃうあたり、ボクも結構見栄っ張りなのかもしれない。
 ちなみに、今はみんなでパーティーゲームをしているところ。すごろくと言うかモノポリーっぽいアレね。
 現在、クレバーな兄さんと運と勘がいい好実が1位争いしてて、ボクはダントツの最下位なんだけど……。
 好実は「やっぱりお嬢様だから、こういうのに慣れてないんだ~」と好意的に解釈してくれてます、ハイ。
 (ゴメンなさい、好実ちゃん、じつはコレがわたくしの実力なんです……)
 サイコロ目が非常に悪いのと、目先の利益についフラフラ流されちゃうんで、この手の運と知略の両方が必要なゲームでは、いっつも負けっぱなしなんだよねー。

 ──ブルルッ……

 「す、すみません、好実ちゃん……」
 少しだけ頬を染めながら、好実の耳にあることを囁く。
 「……うん、わかった。こっちだよ、お姉ちゃん」
 「あン? どーした、好実、ゆき?」
 不審げに顔をあげた兄さんに「メッ!」と指を突きつける好実。
 「雄馬お兄ちゃん、女の子にはね、色々あるんだから、詮索したらダメだよ」
 「?? ……ああ、トイレか」
 兄さんが口に出した言葉に、なぜか自然と頬が熱くなってしまう。
 「おーにーいーちゃん! でりかしーのない男性は嫌われるよ? お姉ちゃん、真っ赤になってるじゃない」
 え、いや、そんなはずは……お、御手洗いに行くのは別に恥ずかしいことじゃ……で、でも、よりによってソレを雄馬お兄様に……きゅう~。
 「だ、大丈夫、お姉ちゃん?」
 「え、ええ、だいじょうぶ、ですわ」
 好実に支えてもらいながら、何とか平常心を取り戻す。
 ──はぁ、ボクって結構自分の演技に酔っちゃうタイプだったんだなぁ。
 さっき、完全に「好きな男性におトイレに行くコトを知られたお嬢様」になりきっちゃってたよ。
 まさかボクが失神しかけるとは思わなかったのか、兄さんも「す、すまん、ゆき。確かに淑女への配慮が足りなかったな」って謝ってくれてる。兄さんの方も半分、コレが演技だということを失念してるのかも。

 とりあえず、ふたりで顔を赤らめてお見合いしててもしょうがないので、ボクは好実に案内されて、お手洗いに向かった。
 や、もちろん自分の家だから場所くらい知ってるけど、「始めてこの家に来たはずの高代ゆき」が間取りを知ってるのはヘンだからね。
 「ありがとう、好実ちゃん」とお礼を言ってから狭い個室(と言いつつ、ウチのトイレは割かし広めなんだけど)に籠る。
 ワンピースの裾をまくってショーツを膝まで下ろし、スカートが皺にならないように気をつけながら便座に腰を下ろす。
 ……って、今、ボク、何の躊躇もなく座っておしっこしようとしたよね?
 マズいなぁ。いや、今のアソコをテープでとめられてるから、確かにこうしないとおしっこもできないんだけどさ。
 普通ココは、立ったままおしっこしようとして便座を上げたり、それが原因で男だとバレたりするのがお約束じゃないの?
 別に無理にバレたいわけじゃないけど、ボク、どんどん女の子としての習慣に染まってるような……。
 まぁ、難しいことを考えるのはあとにしよ。とりあえず、先におトイレしとかないと。
 普段おしっこするときとはまるで違う、なんとも言い難い感覚でボクの股間から尿が滴り始め、すぐにそれはプシャーッという飛沫に変わった。
 テープでおちんちんごと尿道が押さえられてるからだろうけど、かりんさんいわく、「まさに、コレが女の子のおしっこする様そのもの」らしい(うん、ちゃんと尿が出せるか、昨晩実験されましたよ。トホホ……)
 いつもより長く感じられる排尿の時間を過ごしてから、そこを拭くためにトイレットペーパーに手を伸ばす。
 (はぁ……これじゃあ、わたくし、まるっきり女の子ですね)
 冗談半分に心の中で呟きながら、視線を前にやってドキッとする。
 ウチのトイレのドアには、身だしなみを整えるために内側に鏡が取り付けられてるんだけど、そこには「黒と白のゴスロリちっくな服装をした可憐な女の子が、おしっこを終えてアソコを拭こうとしている」姿が写っていたんだから。
 ──ボクは、胸の鼓動が加速していくのを止められなかった。

 ゴクッ、と音がしそうな勢いで唾を呑み込んでから、できるだけ気を落ちつけて、ボクはひとまずソコを右手に巻いたトイレットペーパーで拭いた。
 昨晩テープを貼られてから、この状態でおトイレに行ったのは、寝る前、起きた直後、かりんさん家を出る直前、そして今が4回目だ。
 でも、前の3回はこの状態に不慣れなことと、よその家にいるということの緊張感で、とくに何事もなく済ませることができたんだけど……。
 どうしよう。なんだかヘンな気分になってきちゃったよぅ。
 そりゃねボクだってもう12歳だから、オナニーくらい知ってるし、シてる──あ、でもたまに、だよ? 週に1回くらい。
 ペース的には一昨日の晩にシたばかりだから、そんなにシたくなるはずないのに……。
 ボクは、息を殺して、テープの切れ目から先っちょだけ出ているおちんちんに右手を伸ば……そうとして躊躇った。
 (今の状態でテープが剥がれたりすると、やっぱりマズいよねぇ?)
 素の状態でワンピース着て、万一おっきくなったら、一発でバレちゃうだろうし……。
 かりんさんの家を出る前に例の「アソコに血が集まりにくくなる薬」の粉薬を飲まされたから、たぶん大丈夫だとは思うんだけどね。

 やむなくボクは、両方の太腿の付け根──擬似的に女の子のアソコっぽい形になってる部分に指先で触れた。
 「あッ……」
 股間のその部分──具体的には後ろに折り曲げられたおちんちんの付け根を触るだけでも、じんわりと気持ちいいのは意外な発見かも。
 ツンツンと繰り返し刺激を与えると、下半身がなんとも言えない気分になってくる。ただ、それは普段おちんちんを触ってる時と違って、もどかしいほどに緩やかな興奮だった。
 気がつくとボクは、右手でソコを触りながら、左手をなぜか自然に右胸に当てて、ペッタンコ(男のコだから当たり前なんだけど)のはずのそこをゆっくりと撫でさするように揉んでいた。
 以前、スケベでお調子者の友達にコッソリ見せられた、ちょっとHなマンガの中で、ヒロインの女の子が部屋で「シてる」時のポーズが、こんな感じだったかも。
 (そう言えば、あのコも、こんな感じのワンピース着てたよね)
 思い出すと、余計にヘンな気分になってくる。
 「はぁン、切ない、よぅ……」
 吐息を漏らしながら、左右の手の刺激を続けるボク。
 確かに気持ちいいんだけど……どこか物足りない。でも、だからといって、テープを剥がして、おちんちんでスるわけにはいかないし、第一薬のせいか、そんなに硬くなってない。
 もやもやした気持ちをもて余するボクの脳裏に、昨晩、お風呂でかりんさんに全身キレイに洗われた時の記憶が蘇った。

 あの時、他人(それも綺麗な女の人)の手でおちんちん洗ってもらったことにももちろん興奮したけど、それ以上に驚いたのは、胸の乳首をいぢられた時の電流が走ったような衝撃。
 そして──「男の娘なら、こっちもキレイにしとかんとな!」と言われて、お尻を広げられ肛門に直接シャワーの水流を当てられた時の背筋に走ったゾクゾクするような感覚。
 さらに穴の周辺を丁寧にボディシャンプーで洗浄されたのち、かりんさんは人差し指(たぶん)を第一関節くらいまで、ボクの肛門に突き入れたんだ!
 「はぅン! か、かりんさん、何を……」
 「ん? エエことやー(まぁ、「気持ちエエこと」かもしれんけどな)」
 シャンプーでニュルニュルになってたボクのお尻の穴に、かりんさんのいともたやすく指を入れて、穴の付近を優しくかき回した。
 「にぃゃあぁ……や、やめてくださ……なんか、ヘンなきもちに………」
 「いやいや、ゆきちゃん。女の子なら、本来汚いトコロ──股間とか、脇の下とか、お尻の穴とかほど、お風呂ではキレイにせんといかんのよ」
 わざとらしいくらいたっぷりボディシャンプーを付けた指で、かりんさんは楽しそうにボクのソコをいぢりたおしたんだ。

 (な、なんでこんな時に、思い出しちゃうのよ、もぅ……)
 チラリと横に目をやれば、手洗用小型洗面台の横に液体ハンドソープが置いてある。
 (だ、ダメよ、ゆき、何考えてるの!?)
 で、でも、このままだと、なんだか歩くのもぎこちなくなりそうだし……。
 (そ、それは……わかったわ。けど、ほんのちょっと、試すだけよ。ね?)
 心の中の「わたくし」と会話した後、ボクは右の中指の先にハンドソープの液をちょっとだけ付け、大きくまくりあげたスカートを口でくわえる(コレも、例のマンガでヒロインがしてた格好を真似してるんだけどね)。
 ドキドキしながら右手をゆっくりと股間から後ろの方へと伸ばす。手探りで右中指の先がお尻の穴に届き、ヌルヌルのせいか思いがけないほどあっけなく、ニュルリと中に入り込む。
 「! ッッッーーーーーーッ!!」
 幸いなことに、スカートの端をくわえていたおかげで、ボクの呻きはほとんと外に漏れることがなかったけど、もし口が空いてたら、かなり大きな声で叫んでしまっていただろう。
 痛みでも苦しみでもなく、間違いなくあまりの気持ち良さに。
 (だ、ダメ。こんなの続けてたら、おかしくなっちゃう……)
 もっと奥へ入ろうとする中指を無理やり引き抜き、ボクはショーツを履き直そうとしたんだけど……。
 肛門の少し前、折り曲げられたおちんちんの先端がある場所が、おしっこ以外の液体で濡れていた。
 「なん、で? ……あ」
 問いかけるまでもなく、ボクも気づいていた。
 さっきまでのアレが気持ちよかったからだ。オナニーする時も、おちんちんが勃った時、透明な液体が先っちょから出てたし。
 でも、今のボクのおちんちんは勃ってないし、手で触ってもいないのに、ソコからヌルヌルの液をいつも以上にダラダラと垂れ流していた。
 「ふ、拭かないと……」
 再度トイレットペーパーを手に取り、ソコを拭ったけど、完全に拭き取れてない。いや、拭いても拭いても(ペーパーで刺激されてることもあって)滲み出してくるのだ。
 なんとか「じんわり湿ってる」というレベルに落ち着いたのを確認してから、ボクは黒のショーツを引き上げて股間を隠した。
 さすがにあまり長時間トイレに籠ってると、好実が心配するだろうから、手早く手を洗い、扉の鏡を見ながら身だしなみも整えた。
 鏡の中の「高代ゆき」は、髪がわずかに乱れ、服にも多少皺ができていたが、なぜかさっきまでよりも色っぽく……そしてどこか大人びて見えた。

 * * * 

 <兄's View>

 クソッ! どうなってるんだ、一体……。
 弟の女装した姿である「ゆき」は、さっきまででさえ十分に女の子らしかった。百戦錬磨とは言わないまでもそれなりに女性経験豊富な俺が、ドキッとして惑わされそうになるくらい。
 けど、トイレから帰って来た彼女は、明らかに様子が違った。
 先ほどまでが「少しでも汚すのを躊躇われるような幼き無垢なる聖少女」だとしたら、今のゆきは「清楚な白き花弁が目に眩しいが、それでも花芯から漂う馥郁(ふくいく)たる雌の香りが男を魅惑して止まない一輪の花」だ。
 ──え、何を言ってるかわからない? うん、俺も!
 要はそれだけ混乱しているのだと思ってくれ。
 しかし、この魅了効果は同性(?)には効かないのか、好実は平気な顔でゆきと言葉を交わして、はしゃいでいる。
 結局、集中力と思考力が欠片もなくなった俺がビリでボードゲームは幕を閉じた。

 ダメだ! こんな状態のままでいたら、俺は自分の理性に自信が持てなくなる。
 「好実、そろそろゆきを送って行かないといけないから……」
 「えー、そうなの? まだ4時前なのにィ」
 残念そうな好実だったが、タイミングよく電話がかかって来た。どうやら、友達が誕生日のお祝いをしてくれるらしい。
 ちょうどいいので、俺は愛車に好実とゆきを乗せ、まずは好実をその友人達のところへ送り届ける。
 続いて、本来はゆき──柚樹も、かりんの店にでも送って、いつもの格好に戻してもらうべきなのだろうが……。
 その時、俺の脳裏からは、助手席に座る「高代ゆき」という少女が、本当は自分の弟であるという意識は、ほとんど消え去っていた。
 俺は無言でハンドルを切り、自宅へと向かった。


その5)本当の恋人

 何となく予感はあった。
 ──いや、期待していたのかもしれない。
 なぜなら、「ゆき」としてのボクを想像の中で抱いていたのは、いつも兄さんだったから。

 何かを堪えるような(元が同性だけにボクにもその意味は分かった)顔した兄さんは、家へとクルマを走らせ、助手席から降りたボクの手を引いて、無言のまま家に入る。
 けれど、そのまま二階へと上がり、3つ並んだボクたちの部屋の前まで来たとき、一瞬立ち止まり、ギリッと奥歯を噛みしめたのち、ボクにこう言ったんだ。
 「──ほら、柚樹、自分の部屋で着替えろよ」
 ……って。

 「お、俺は……ちょっと用が出来たから出かける。鍵は閉めちゃっていいぞ」
 え? いっちゃうの? 本当に?
 ──ボクの事、大切にしてくれてるんだ。でも……。
 「……ゆ、き?」
 気がついたらボクは、兄さんの手を掴んでいた。
 「やぁ……いっちゃ……やだぁ」
 「お、おい、ゆき、手を……」
 放せと彼が言い終える前に、上を向いて兄さんの口にボクの唇を押しつける。
 (あぁ……わたくし、ファーストキスをお兄様に捧げたのですね)
 例によって心の呟きが乙女ちっくに変換されるけど、もぅそれは気にならなかった。
 一瞬驚いた顔をしたのち、兄さんはボクを思い切り両手で抱きしめてくれた。
 「バカ、お前、せっかく俺が珍しく紳士を貫こうとしてんのに」
 「ウフフ……雄馬お兄様に無理は似合いませんわ」
 「はは、違いない」
 ふわりとその逞しい両腕でお姫様だっこの形で抱き上げられると、そのまま今度は兄さんの方からキスしてきた。
 差し入れられた彼の舌が、ボクの口内をなぞっていく。初めての体験なのに、気が狂いそうなくらい気持ちいい。
 口づけを交わしたまま、兄さんは足で自室の扉を開けると、ボクを抱いてその中へと入る。
 「知ってるか? 欧米では、結婚式のあと、新郎は新婦をこんな風に抱っこして新居に入るという習慣があるんだぞ?」
 唇を離して、兄さんが耳元で囁く。
 「あら、それでは、わたくしは、これからお兄様のお嫁さんにされてしまうのですね?」
 ふざけて言ったつもりだったのに、兄さんの顔は恐いくらいに真剣だった。
 「ああ、その通り」
 言うが早いか再びボクの唇を貪った。
 舌を絡め、互いの唾液を交換して飲み干す。
 「あぁン……何だかじんじんする……体中がじんじんして、おかしいのぉ」
 「可愛いぞ、ゆき」
 可愛いと、綺麗だと彼に褒めてもらうだけで、身体の芯が熱くなっていく。
 まるで、身体だけでなく脳までもとろける感じ。
 兄さんの言葉だけでも、ボクの体は反応するようになっている。

 そのまま、優しくベッドの上に横たえられ、今度は軽いキスののち、兄さんの手がボクの体中を撫で回し始めた。
 「ふわぁあっ……」
 不思議。気持ちが高ぶるほど、体中がおかしくなっていくみたい。彼の手がボクのどこをなぞっても、刺激が、快感が伝播して、気持ち良さに狂ってしまいそうになる。
 「感じやすいんだな……ゆき。ますますいぢめたくなるぞ」
 「やぁん……い、いぢめないで、お兄様ぁ……は、恥ずかしい……」
 「へぇ……肌、凄く綺麗だ」
 「あひゃっ! くうんっ……ひゃうっ……気持ち……いいよぉ……」
 襟元をはだけられ、黒い下着に包まれた胸元が露わになる。
 「ほぅ……黒か。意外だったけど、よく似合ってる」
 「ひゃ! ん……ホント?」
 彼の舌がボクの首から鎖骨、そして胸元のあたりを這う。
 耳やうなじなどの敏感な部分を舐められると、身体が勝手にびくんっと小刻みに痙攣してしまう。
 「可愛いさくらんぼだ」
 その一方で、お兄様はわたくしのブラジャーをズラし、ペッタンコの胸を愛撫し始めました。
 「あぁ……ダメぇ、見ないでぇ……」
 わたくしの制止も構わずにお兄様の手は、優しく、けれど大胆にサワサワとわたくしの未成熟な胸を弄んでいます。
 あるいは羽根で撫でるように軽く触れ、
 逆に密着させた掌をにギュッと力を込めて揉みしだき、
 さらに胸の先っちょ──乳首を指先で摘みあげる。
 「やぁ……む、むね……むねぇ……ふあぁん、やだ、やめて……」
 わたくしは、予想だにしなかった未知の感覚に、翻弄され、途切れ途切れに悲鳴をあげることしかできません。
 そして。

 ──コリッ!

 「ひぁっ……そ、それぇ! し、刺激…強すぎますぅ……」
 耳元に熱い吐息をふきかけていたはずのお兄様の唇が、いつの間にかわたくしの胸のポッチをついばんでいました。
 「んっ……そうか? 悪い。あまりに美味そうだったんで、ついな。けど、普通に乳首吸っただけで、そんなになるとはいやらしい子だ」
 「そ、そんなぁ……わたくし、いやらしくなんて……ひゃあぁあんっ!!」
 い、言ってるそばから、甘噛みしないでください!
 「いやいや、この歳でこんだけ乱れまくるってのは、十分淫乱娘の素質あると思うぜ……こんなにエッチなコ、初めてだ」
 「うぅ………雄馬お兄様は…いやらしい子は……お嫌い、ですか……?」
 涙目で見上げると、お兄様はわたくしの目の端にキスして涙を拭い、そっと囁いてくれました。
 「いいや、大好きだよ……特に、ゆきのことはな。世界で一番好きだ」
 「!! おにいさまぁ……」

 * * * 

 <兄's View>

 嬉し涙をあふれさせたゆきの唇を自らの口で塞ぐ。
 すると彼女も、先ほど以上に積極的に舌をからめてきた。

 ──ジュク……クチュ……ピチャ……

 吐息と唾液のたてる水音だけが、しばし部屋にこだまする。
 さらに、ゆきをすっぽり抱きしめたその体勢のまま、俺は両手を伸ばして、肩から背中、脇、腰へとなだらかな曲線を包み込むように愛撫する。
 そしてついに下半身に到達した俺の手は、スカートの裾をまくりあげた。
 恍惚としていたゆきは一瞬身体を固くしたが、直ぐに俺にその身を委ねてきた。
 未知の感覚に本当は怖気づいているだろうに、それでも俺を信じてくれているのだ。
 胸に湧き上がった愛しさをフィードバックするように、剥き出しになったヒップを優しく撫でさする。
 成熟した女性とは、まろやかさの点では比べるまでもないが、滑らかで吸いつくような肌の手触りは決して負けていない。むしろ、プリプリとした若い肌の弾力が今まで体験したことのない心地よい感覚をもたらしてくれている。

 唇を離した途端、ゆきの口から歳に似合わぬ艶っぽい吐息が漏れた。
 どうやらキスだけでなく、尻への愛撫でも感じてくれているようだ。
 そのまま、小さな円を描くように愛らしい桃尻を外側から揉みしだいていた俺の手は、徐々に身体の中心線へと移動し、遂にその割れ目にまで届いた。
 慎重に黒のショーツを脱がせようとしたが……

 ──ヌチャぁ……

 「ゆき、コレは……」
 「あぁ……お兄様ゴメンなさい」
 トイレでつい尻穴をいぢり、感じてしまったというゆきの告白は、今の俺にとっては天恵にも等しかった。
 「イケナイ娘だなぁ、ゆきは。恋人としてお仕置きしないと」
 ニヤける表情を押さえつつ、俺は「おしおき」の内容を、小さな恋人に告げた。

 * * * 

 「さ、ここに四つん這いになって」
 拒むことができず、わたくしは言われた通りにベッドに両手と両膝をつきました。
 スカートが腰までめくられます。さらに黒いショーツも完全に腿の半ばまで剥きおろされてしまいました。
 (はうぅ……これじゃあ、お兄様にお尻丸出しです……)
 恥ずかしさに、頬が熱くなります。
 「フッ、綺麗だぞ、ゆきのお尻」
 露わになったお尻の肉を、お兄様がモミモミと揉むほぐします。
 その感触に背筋を震わせつつ、どこかもどかしい気持ちもわたくしの中に湧いてきました。
 (ああ……お兄様、わたくしのお尻を……もっといぢってください)
 とくに、今まさに、丸見えになっているはずの、その部分が切ないです。
 「ふむふむ。ゆき、もうちょっとお尻あげてみな」
 お兄様がわたくしのヒップを軽く撫でます。
 さらに恥ずかしい姿勢をさせられるとわかっていても、なぜだか抵抗できません。
 下半身を甘く疼かせながら肘をつき、高々とお尻をかかげます。それによって、お尻の割れ目がぱっくりと開いているのが自分でもわかり、一層顔が赤くなります。
 「おお、ゆきは、コッチの穴も凄く可愛いな!」
 お兄様の称賛に顔が火照ります。
 (そ、そんなところ、自分でも見たことありませんのに……でも、うれしい)
 身悶えしたいほど恥ずかしいのに、なぜだか胸がドキドキします。このまま、お兄様に、ソコを無茶苦茶にされたい……そんな衝動すら湧いてきました。
 そして、わたくしの密やかな期待に、お兄様は応えてくださいました。

……
…………
………………

 何度も連続して小さなエクスタシーが生まれて意識がふっと途切れかけるのですが、決定的なソレには至りません。
 そのクセ、押さえられたアソコから出た透明な粘液が、糸を引いて際限なくシーツに垂れ続けます。
 (あぁ、死ぬ、死んじゃう……気持ちよすぎて、もう死んじゃいます! でも、でも………死んでもいいっ!!)
 身体の芯が熱くなり、頭の奥が痩れて意識が薄れます。
 このまま続けていたら、わたくしは壊れてしまうかもしれません。
 今の状態のままずっと快楽に溺れていたいという気持ちもあるのですが、それではこのまま戻ってこられなくなりそうです。
 「お、お願いです、お兄様! これ以上されたらっ! わ、わたくし、おかしくなっ……ひあああっ!」
 けれど、ジレンマに揺れるわたくしの心に、お兄様は悪魔のように甘美な誘惑を囁きます。
 「いいんだよ、おかしくなっても。ゆきがどんなにエッチでいやらしいコに壊れちゃっても、俺は大事にしてあげる。毎日エッチなことしてあげるから。
 だって俺達は恋人だろ?」

 ──ぞくぞくぞくっ!

 妄執すら感じられるその愛情の籠った言葉に、わたしの理性が一気に沸騰してしまいました。
 「あ、い……イッちゃう、イっちゃうううぅ」
 「くっ、俺も、そろそろ限界だ、ゆき。イクぞ!」
 「イクイク、あ…あぁぁぁぁぁーーーーーーーッッッ!!!」
 わたくしは、体躯をガクンガクンと波打たせたながら昇りつめます。
 体内に愛しいお兄様の暖かいものを感じながら、次第に脳裏が真っ白になって、わたくしはそのまま意識を失いました。


そしてそれから

 ──数年後

 地元では有名な私立星河丘学園へと向かう通学路を、中学生くらいの少年少女達が、三々五々に歩いている。
 時刻は午前7時50分。始業にはまだだいぶ余裕があるが、さすがは名門と言うべきか、大半の生徒は学園近くまで来ているようだ。
 ちなみに、その大半は中学生──中等部の生徒たちだ。高等部は全寮制で学園のすぐ裏手に寮があるため、一部の自宅生を除いてまだほとんど姿は見られない。
 「おはよう、このみっち!」
 「……おっはー」
 友人たちから声をかけられて、大きめのリボンで髪をピギーテイルにまとめた少女は振り返った。
 「あ! おはよ~、千恵ちゃん、みっちゃん。今朝も早いねぇ」
 「ま、あたしは、ソフト部の朝練があるからね。みっちぃは……」
 「……今朝の占いで、早めに登校するのが、吉と出た」
 元気はつらつスポーツ少女と言った印象の安岡千恵と対照的に、占い同好会の部員である来栖美智子は、朝に似合わぬ陰りのある空気を発しているが、相方の千恵は慣れたものだ。
 このふたりに脳天気天然お子様少女な日下部好実を加えた3人は、趣味も嗜好もまちまちなのだが、なぜか一年生の頃から仲が良かった。

 「……でも、好実が、この時間に登校していることの方が、驚異的だと、美智子は思う」
 「ま、そうだね。こないだも担任のマナちゃん先生に、いつも遅刻ギリギリなのを注意されてたし」
 「にゃはは……面目ない。今日は日直さんなのですよ~」
 食べることと寝ることが趣味と公言してはばからない少女は、頭をかいた。
 もっとも「寝る子は育つ」と言う割に、ちんまりとした背丈とツルペタストーンとした体型は、あまり成長が芳しいようには見えないが。

 「あら、やっぱり、好実ちゃんはいつもお寝坊してたのね」
 「「「!」」」
 そこへ背後から玲瓏たる声がかけられ、三人娘は一斉に振り向く。
 そこには、三人と同じく星河丘学園中等部の制服をまとった──しかし、わずか1学年違いとは思えぬほど、大人びた美貌を持ち、清楚で上品な雰囲気をたたえた少女が佇んでいた。
 「あ、お姉ちゃん!」
 「高代先輩、おはようございます」
 「おはよう……ございます」
 微妙に様相は異なるものの、3人は立ち止まってそれぞれ喜色をその顔に浮かべた。
 「おはようございます、安岡さん、来栖さん。それから好実ちゃんも二度目になるけど、おはよう。ほら、立ち止まってないで、歩きながらお話しましょう」
 無論、3人に異論はない。
 本物の妹である好実はもちろん、千恵や美智子も、三年生である彼女──高代柚季のことを「頼りになる先輩、かつ素敵なお姉さん」として慕っているのだ。
 他愛もないことを話す妹分3人の言葉をニコニコしながら聴く柚季。ただ、学校が近かったため、その楽しい時間はあまり長く続かなかった。
 「じゃあ、三人とも今日もお勉強、頑張ってね。それと、好実ちゃん、あまりお母様の手をわずらわせてはダメよ?」
 義妹を優しくたしなめると、柚季は三年の教室の方へと去って行った。

 「──はぁ~、やっぱり高代先輩は凄いなぁ」
 「えっへん、そりゃあ、あたしの自慢のお姉ちゃんだもん!」
 「……成績は学年首位かつ運動も万能。生徒会長でおまけに家は大金持ちのお嬢様」
 「学園祭のミス星河丘ジュニア部門で2年連続優勝、今年もトップは不動だろうってもっぱらの評判だし」
 「ふぇっ!? そーなの?」
 きょとんとする好実の様子に苦笑するふたり。
 「まったく、こんなポケポケ子狸さんが先輩の妹だとは、未だに時々信じられないなぁ」
 「……不思議。生命の神秘?」
 「千恵ちゃんもみっちゃんもヒドい~! それに、お姉ちゃんとあたしは血が繋がってないんだから、しょうがないよ」
 「前に聞いたけど、再婚同士の連れ子だっけ?」
 「うん。高代ってのはお母さんの旧姓なの」
 「……疑問。なぜ、旧姓を? 話を聞く限りでは、家族仲は良さそう……」
 「えぇっと……これ、言っちゃっていいのかなぁ。あのね、実はお姉ちゃん、うちのお兄ちゃんと婚約してるんだ」
 「「えーーー!!」」

 * * * 

 さて、どうして本来「日下部柚樹」という少年だったはずの存在が、「高代柚季」という女子中学生として学園に通うようになるのか、その理由は、「ゆき」が雄馬と結ばれた直後まで遡る。

 「……き! おい、ゆき、大丈夫か?」
 恋人になったばかりの義兄の声で、「彼女」は意識を取り戻した。どうやら、快楽のあまり、一瞬失神していたようだ。
 「う……大丈夫、ですわ、お兄様」
 起き上がろうとして、未だ自分の体内」にある愛しい人の分身に気付く。
 ふと、悪戯心が湧いたゆきは、「えいっ」と可愛らしい声とともにソコに力を入れてみた。
 「ぐっ……ちょ、何するんだよ、ゆき?」
 「うふふ、すみません。お兄様とひとつになれたのが嬉しくて、つい」
 微笑む小さな恋人の表情にドキッと見とれた雄馬は、先ほどの刺激もあって再び猛り始める。
 「あンッ……お、お兄様、また……」
 「すまん、ゆき。でも、お前が可愛過ぎるのがイケナイ」
 そう言いつつ、2ラウンド目が始まろうとした、その時……。

 ──バタン!

 「ヤッホー! パパとママのお帰りだぞー!」
 「何とか仕事片付けて帰って来たわよ!」

 突然、雄馬の部屋の扉が開いて、ヨーロッパにいるはずの両親が入って来たのだ。
 あまりの予想外な事態に硬直するふたり。
 もっとも、ソレは両親の方も同様だった。
 サプライズで娘の誕生日に帰国したものの、娘の姿は見当たらず、その行方を上の息子に尋ねようとしたら、本人は女の子とニャンニャンしてる真っ最中だったのだから。
 しかも、お相手の女の子は、どう見ても中学生くらいにしか見えないのだ。

 「こ、高校・大学と、モテるクセにステディな相手が出来ないと思ったら、まさか雄馬がロリコンだったとは……」
 取り乱す父親を尻目に、いち早く立ち直った母親が夫の手を引っ張る。
 「あなた、色々言いたいことはあるけど、とりあえずココは一時退散しましょ。相手の娘さんに恥をかかせるのは可哀相だわ」
 「あ、ああ、そうだな……雄馬、15分だ。居間で待ってるから、15分経ったらその娘さんを連れて、降りて来い」

 その後、父母が気づいてないのをイイことに、あくまで「中学生の少女で、雄馬の恋人であるゆき」として押し通そうとしたのだが……あえなく、その目論見は失敗する。
 いや、ゆきがかりんから持たされたポーチに化粧道具や替えの下着が入っており、それを用いて、ほとんど「行為」前と遜色ない美少女に仕上げることはできたのだ。
 実際、父親の方は「ゆき」の淑やかな言動にほぼ完全に騙されており、「中学生というのが問題だが、今後16歳まで清い交際をするなら、ふたりの仲を認めよう」的な流れで落ち着きそうになっていた。

 ところが。
 それまで不気味に沈黙を守っていた母親が、そこで「ゆき」の正体を看破した。服装や化粧は元より、声色や仕草まで完全に変えているのに見抜くとは……これが「実母の勘」と言うヤツだろうか?
 再び状況は振り出しに戻る……いや、むしろ悪化したかと思われたのだが、ここで母親が、息子であるはずの「彼女」に尋ねたのだ。「本当に心から雄馬のことが好きなのか?」と。
 軽々しく答えることを許さない迫力があったが、「ゆき」はハッキリと頷いた。
 「わたくし、お兄様が世界でいちばん好きです! この人の恋人になれるなら、すべてを捨てても構わない!」
 「彼女」の決意を受け止めた母親は、一転容認する立場に回る。
 それでも、普通の家庭なら勘当沙汰になってもおかしくはないはずだが、何気に妻の尻にしかれている上、(義理も含めて)子供たちを溺愛している父も、最後には折れた。

 「仕方ない。それでは、柚樹は「性同一性障害」だったということで手を回すか」
 「あなた、私、いい学校を知ってますわ」
 あれよあれよと言う間に夫婦間で相談がまとまっていく。
 「ふむ、そちらは任せよう。ところで……」
 ズイッとゆきの方に踏み出す父親。
 反射的に雄馬がかばおうとするが、ゆきは「大丈夫ですわ、お兄様」とけなげに踏みとどまってみせる。
 「柚樹……いや、「ゆき」と呼ぼうか。ひとつ頼みがある」
 「な、何でしょう?」
 と、そこで父親はいかめしい表情を崩した。
 「あ~、わしのことは、以後、「お父様」と呼んでくれんか?」
 「は? え、ええ、そのつもりでしたけれど……それだけでよろしいのですか、お父様?」
 ゆきの「お父様」と言う言葉にジーーンと感動を噛みしめる父親。
 「うむうむ、美しく成長した娘に「お父様」と呼ばれるのは、やはり男の浪漫よのう……もういっぺん、頼む!」
 「あ、はい……お父様♪」
 サービスして語尾に多少の愛情を込めると、父親は「おふぅ!」と悶絶している。
 「あ~、浩之さんばっかズルぅい、私だってゆきちゃんと仲良くしたいのにぃ!」
 母親も有能なキャリアウーマンの表情をアッサリ崩して、ゆきに後ろから抱きつく。
 「いやぁ、好実とは違ったタイプのお洋服が似合いそうねー、一緒にお買い物に行くのが楽しみだわ~」
 「え、えーと……お母様?」
 「あら、だってゆきちゃんもお洒落には興味あるでしょ?
 ……それにその方が雄馬くんをもっとメロメロにできるわよ(ボソッ)」
 「は、はいっ、楽しみですわ、お母様!」

 ──わいわい、がやがや……

 先ほどまでのシリアスな空気はどこへやら。すっかり「祝・ふたり目の娘誕生!」といった雰囲気になりつつあるこの部屋の空気に、「義妹兼恋人は俺が護る!」的な覚悟を決めていた雄馬は、すっかり取り残されてしまったのだった。

 「いや、まぁ、万事丸く納まったんだから、いいけど……なんか納得いかねぇ」
 後日、あの時のことを思い出して、首をひねる雄馬。
 「フフフ……よろしいではないですか。わたくしとしては、お兄様との仲を認めていただけただけでも、十分ですのに、ここまでしていただけたのですから」
 いろいろな裏工作の結果、正式に戸籍名を「高代柚季」と名乗ることになった彼女は、苦笑しながら、恋人に腕をからめて、その身を預ける。
 種を明かせば、母の実家である高代家の養子になり、同時に名前の文字を変更したのだ。
 また、冬休みが明けたら、電車で2駅ほど離れた高代家(つまり祖父母の家)に移り住み、3学期はそちらの学校へと転校する予定だ──もちろん女の子として。
 そして、中学は日下部家の近くにある私学を受け、首尾よく合格したら日下部家に「通学のために下宿する」と言う建前で戻って来る予定だったりする。
 無論、短期間でそれだけのお膳を整えるのはなかなか大変だったようだが、まぁ、現代日本でも、金とコネがあれば多少の無茶は可能らしい。

 そして実際、星河丘学園に入った彼女のマドンナっぷりは、ご覧の通り。
 これは、両親から雄馬と交際を続けるために「女の子らしくする」のはもちろん、「文武両道に励む」ことも条件として出されたからだが、その点、彼女は両親の期待以上の成果を上げたと言えるだろう。
 元々兄の個人教授のおかげで成績は悪くなかったし、体力面は言わずもがな。
 さらに、日下部家は元より、戸籍上の「実家」高代家も相応に歴史ある旧家であり、「彼女」をお嬢様と呼ぶのは(性別はともかく)あながち間違いではなかったりするのだ。
 その高代家には、週末毎に「帰省」している(本人的にはお泊りに行く)のだが、そこでは祖父母(形式上は養父母)から「大和撫子かくあるべし!」的な教育を受けている。
 その薫陶もあって、「良家のお嬢さん」としての演技は演技の域を超えて、すっかり地(ほんもの)になりつつあるのだ。
 おかげで、一年生の頃から男女問わず「高代柚季」の人気は高く、二年生の二学期には前任者から生徒会長に推薦され、中等部全体の9割近い得票で当選していたりする。

 ちなみに、ゆきの身体そのものは未だ外科的な手術などは行っていない。これは、「成長を阻害しないのと、万が一中学の内に気が変わったら」ということらしい。
 ただ、母が伝手で購入してくれたブラジャーやボディスーツなどの補整下着(ファンデーション)が優秀なおかげか、着衣は元より下着姿になっても「彼女」は女性にしか見えなかったりするので、学園でバレる気づかいはないだろう。

 * * * 

 <妹's View>

 「し、知らなかった……先輩に許婚がいたとは……」
 「……しかも、義理の兄。ちょっと、背徳的」
 まぁ、普通驚くよねぇ。いまどき15歳で婚約者がいて、しかもそれが義理とは言え、兄なんだから。
 「でも、お兄ちゃんとお姉ちゃん、傍から見てても、ほんっとーーーにラブラブなんだよ?」
 それだけは、身近で見てる家族として、自信をもって断言できる!
 ──て言うか、正直目の毒だと思うことも多々あるんだよねー。
 下手すると、お兄ちゃんたちにアテられて、お父さんたちまでイチャイチャし始めるし。
 「ひとり者の乙女としては、時々さびしーのですよ」
 「あはは、それなら、好実も早く恋人作らないとな!」
 「……ちなみに、好実は現在、恋愛大殺界。2年後まで、続く見込み」
 えー!? それって、これから2年間はロクな恋が見つからないってこと?
 うぅ……みっちゃんの占い、結構当たるんだよねぇ。

 学園でのお姉ちゃんは、凛々しくて素敵な女性(?)だし、もちろん家でも基本的にソレは変わりはない。(「柚樹お兄ちゃん」としてはさておき)初対面の時、「憧れの理想像」だと感じた想いは、今でも変わりはない。
 けど、そこに雄馬お兄ちゃんが絡むと、途端にフニャフニャさんになっちゃうからなぁ。
 雄馬お兄ちゃんもお兄ちゃんで、単独ならキリッとした頼りになる男性なのに、お姉ちゃんの前ではただの色ボケさん(ってお父さんが言ってた)だし。
 ま、学園では「理想のお姉様」モードのお姉ちゃんが堪能できるのが救いかな。

 ──けれど、あたしは忘れていたのだ。お兄ちゃんが大学で教職課程を取っていることを。

 「ただいまご紹介に預かりました、教育実習生の日下部雄馬です。高等部で英語を教えることになっています。未熟者ではありますが、精一杯頑張ります!」
 朝の中高合同の朝礼で壇上に上がったスーツ姿のお兄ちゃんの姿を見て、あたしはポカンと口を開けることしかできなかった。
 反射的にお姉ちゃんの方に目をやると……嗚呼、なんか瞳をキラキラさせた「恋する乙女」モードに入ってるぅ~!!
 「へぇ、アレが噂の好実のお兄さんか。結構イケてるじゃん」
 「……案外、まとも…いえ、真面目そう」
 ああ、確かに見た目はね。と言うか、お姉ちゃんが絡まなければ、あの人だって十分自慢の兄なのですよ~。けど、ねぇ……。

 * * * 

 好実の予感は当たり、お昼休みの中庭では、ベンチに仲良く並んでお弁当を食べる「兄妹」の姿ががが……。
 「おにょれ、雄馬お兄ちゃんめぇ! 学園(ココ)でまで、あたしから「素敵なお姉ちゃん」分を奪うつもりかー!」
 思わず奇声を発する好実に気づく兄と「姉」。
 「あら、好実ちゃん」
 「お、好実も来たのか? 折角だし、一緒に食うか?」
 「今日のお弁当はわたくしが作ったのよ」
 「! わーい、食べるぅー!」
 祖母仕込みの、ゆきの料理スキルは非常に高い。なにせ文化祭の料理コンテストに飛び入りで参加した際、高等部の家庭科部部長をして「ぜひ、家庭科部(ウチ)に欲しい逸材」と言わしめた程だ。
 「あーあ、好実のヤツ、すっかり餌付けされてるね」
 「……アレは、アレで、安定した形。それにアレなら、他の生徒からの嫉妬もかわせる」
 「い、意外と策士だね、お兄さん」
 「……話を聞いた限りでは、7歳違いの恋人同士。周囲から、色々言われる機会も多いと、思う」
 などと、友人たちが見守る中、兄妹3人は仲睦まじく昼食を共にするのだった。
 「ウフフ、今まで以上に学園が楽しくなりそうですわね♪」

-FIN-
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#以上。ちなみに、柚季ちゃんが着用しているのは、もちろん学園の養護教諭にして稀代の発明家たる双葉あると女史謹製の「魔法の補整下着」です。なので、実はこの時点で実質的に女性化完了済み。
#中学卒業時に柚季ちゃんは性別変更届けを提出、受理される予定。これで、愛しのお兄様との結婚もOK。ご都合主義万歳!
#雄馬くんは無事教員免許を取得し、翌年、学園に教師として赴任してきます。もちろん、高等部に進級した柚季ちゃんは大喜び(そして好実ちゃんは大落胆)。もっとも、学校では真面目に先生してるのですが(少なくとも人前では)。
#なお、柚季は加奈子やアルピナス、キャロルたちと同学年です。
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