『ルイズは悪友(とも)を呼ぶ! After&Before』その13

「るいとも」第二部&第三部の「結」に当たる章です。
……と言っても、直接的には「A*12」から続いているワケですが。

『るいとも *A&Bの13』

 ガリア紛争が一通りカタがついた後、才人とルイズは、しばらく離れることになった。
 ルイズいわく、「しばらくひとりで考えたいから」とのこと。
 まあ、ほんっと~に色々あったし、仕方ないと、才人も納得はしている。
 (なにせ、ルイズ(&テファ)が虚無の使い手であることが、各国首脳クラスにバレちゃったからなぁ)
 実のところ、ヴァリエール公爵夫妻は、その可能性については以前から予測はしていた。
 アカデミー研究者のエレオノールが、ルイズの"どこでもドア"こと正式名称"世界扉"の魔法が、始祖の使った"虚無"の一種である可能性については、随分前から考察してたからだ。
 それでも、娘を「始祖の再来」なんて大層なものに巻き込みたくないから公爵家ぐるみで握りつぶして秘密にしていたのだが……。
 (うぅ、義父(おじ)さん義母(おば)さん、表に出しちゃって、本当にサーセン)
 とりあえず、フランスの方角に向かって頭下げる才人だった。
 実際、停戦後に大騒ぎになったし、一部には「虚無の担い手こそを次代の王に」と言う意見も冗談抜きであったのだ。
 何とか沈静化はしたが、そういう件も含め、ルイズもじっくり考えたいということなのであろう。

 * * * 

 それにしても……ルイズと魔法学院で別れてから、もう1ヵ月、かぁ。
 6歳の時、初めてルイズと出会って以来、こんなに長くルイズと顔を合わせなかったことはなかったかもしれない。
 最長でも一週間おきには会ってたしなぁ。
 (うーーーん、やっぱりこういう時は、俺の方から無理にでも、会いに行くべきなのかね)
 そう考えて、机の引き出し──例の固定化された"世界扉"に入ろうかと思ったんだけど……。
 「う、嘘だろ、ヲイ!」
 ソコは、いつの間にか元の引き出しに戻っていた。
 ルイズいわく、半永久的にもつはずだってのに……。
 ルイズ自身が解除したのか、あるいは何らかの魔法的な攻撃を受けて、あちらの扉であるタンスが壊されたのか。
 いずれにしても、これで俺の方からできることは何もなくなったワケだ。
 クソッ、これじゃ本当に「ドラえモン」の最終回みたいじゃねーか!
 「ふぅっ……会いたいよ、ルイズ」
 思わず弱音が口からこぼれる。
 ──ヒョイッ
 「呼んだ?」
 「どわぁ!!」
 あまりにお約束なタイミングでルイズが背後から現れたんで、さすがにビックリする。
 「ああ、ゴメンゴメン。いやぁ、そろそろ、私も才人分を補給したくなったんで、来ちゃった」
 ニコッと笑ったルイズだけど、俺の目の端に溜まった水分を見逃してはくれなかったようだ。
 「あれぇ~、ひょっとして才人、泣いてた?」
 「だ、誰が……」
 言いかけてやめる。
 「ああ、そーだよ。お前に会えなくて……もしかしたら一生会えないかもって思ってたら、涙が出て来たよ!!」
 「――そっか」
 いつもみたく茶化したりせずに、ルイズは優しい笑顔浮かべてゆっくり歩み寄ると、ボフンと俺の胸の中に顔を埋めてきた。。
 「ありがと。才人。私のことを思ってくれて」
 ああ、何だか癒されるなぁ……ギャルゲとかアニメのヒロインたちがニコポナデポで懐柔されるのって、こーいう気分なのかも。

 それから、俺達は、ベッドに腰かけて色々話をした。
 大事なこと、くだらないこと、過去のこと、未来のこと、身近なこと、大きなこと……いっぱいいっぱい話をしてるうちに、疲れて俺は寝ちゃったみたいだ。
 「あ…れ?」
 ハッと目を覚ますと、俺はひとりでベッドの中で寝こけていた。もちろん、ルイズの姿はない。
 ひょっとして夢だったのか……とも思ったが、机の上に見覚えのある筆跡で、走り書きのようなメモが残されていた。

 『またね  愛しのルイズより』

 「またね、か……」
 微妙に憂鬱な気分で登校する。
 久しぶりにルイズに会えたのは嬉しいが、やっぱり忙しいんだろうなぁと思うと、今度いつ会えるのか不安になる。
 (ひょっとして、アレで「さよなら」のつもりとか、ないよな?)
 イヤイヤイヤ! 俺とルイズの絆は、そんな簡単に切れるものじゃあない……そう、思いたい。

 今日は、三学期末の研修旅行(ウチの学校は学年ごとにいわゆる修学旅行的なものがあるのだ。3年生の場合は、事実上、卒業旅行だけど)の班決めをするはずなんだけど、イマイチ、テンションが上がんないなぁ。
 朝のHRで、担任の話をボンヤリ聞き流してた俺は、けれど次の言葉にピクリと反応する。
 「え~それから、こんな時期だが、今日から我がクラスで転入生を迎えることとなった。入りたまえ!」
 俺はある種の期待をもって、教室の扉を見つめる。

 そこに現れたのは。
 やや小柄な身体を我が校指定のブレザーに包んだ、金髪の少女――ティファニアだった。
 ──ガクッ、とテンションが一気に下がる。
 「あの、ティファニア・ウェストウッドです。えっと、イギリスの……すごく田舎の方から来ましたので……その、色々わからないことも多いと思いますけど……よ、よろしくお願いします!」
 わぁ~と教室中(主に男子)が金髪巨乳美少女の出現に湧く。
 (あぁ、そう言えば、テファが一時コッチに来るみたいなこと、昨日ルイズが言ってたっけ)
 懐かしい顔に会えたこと自体は嬉しいが、俺の高まった期待感が、行き場を失ってパンクしたタイヤみたくプシューッと失速するのがわかるぞ。

 と。
 ヒートアップしてる教室に気まずそうに顔を出す、もうひとりの影が……。
 「え、えーと、盛り上がってる中、何か出にくいんですけど、ルイズ・フランソワーズ・ヴァリエールです。去年この学校にしばらくお世話になってたんで、顔見知りの人もいますけど、改めてフランスより舞い戻ってまいりました」
 !
 そーいう二段オチかよ!!
 「改めまして、ヨロシク、ね?」
 教壇上でパチンとウィンクするルイズの様子に、俺は笑っていいやら、泣いていいやらわからなかった。

 ルイズの話では、一部の人間とはいえ、虚無の使い手であることが知られたことの影響は、思った以上に大きく、マジで王位継承権なんてモノも持たされそうになったらしい。
 そういう一切合財含め、今後の人生全般について悩んだ挙げ句、一念発起して魔法学院は自主退学して来たんだとか。
 「ヴァリエール公爵とか、カリンさんとか、さぞかし怒ったんじゃねーの?」
 そう聞いたところ、意外にもふたりともルイズの好きにしていいと言ってくれたそうだ。
 「「お前の人生なんだから、お前が決めなさい。もう子供じゃないんだから」って。ちょっと寂しそうだったけどネ」

 そして、ルイズとして今一番やりたいことは、日本の高校に通うことだった。
 「べ、別に、アンタと一緒の学校に通いたいワケじゃないんだからね! 去年、クラスのみんなとまた会おうって約束したから、それだけなんだから! ……なぁんてね♪」
 いや、無理にツンデレなくても。
 「え~、じゃあ「才人ぉ~、しゅきしゅきぃ! 抱っこしてェ」とかデレてほしい?」
 デレっつーか、そりゃ、もはやヤンデレかコワレだ。極端過ぎるだろ!

 ――まぁ、こんな風にジャレてるのが、俺達らしいし、傍から見たら十分バカっプルかもしれん。
 そんなワケで、ルイズは再び、今度は"短期の体験留学"じゃなくて、正規の生徒として俺の高校に通うこととなった。
 「とりあえず、大学まではこっちで暮らすわ。もちろん、時々は向こうにも顔出すけど」
 虚無に関するほとぼりが覚めるまでは、ハルケギニアには基本的に戻らないつもりらしい。

 テファの方は、ウチの病院で耳の整形手術を受けるんだそうだ。普通の人間と同じような形にしてから、ハルケギニアに戻って、なんとアルビオンの王位継承権を得るんだとか。
 えーと、つまり、アレか……テファ王女殿下(プリンセス・テファ)?
 「その呼び方だと、なんか、どこぞのエロゲの魔法戦士なお姫様みたいね」
 「アレは18禁だぞ。なぜに知ってる、現役女子高生!?」
 「お互い様でしょ」
 ……それはともかく。
 手術以外にも前後の段取りにはしばらくかかるんで、アンリエッタの助言もあって、人に慣れる意味もあって、ウチの高校に放り込んだらしい。
 ま、アッチじゃあマチルダさんが専任の女官として付くらしいから何とかなるだろ。それまでは日本でしばしの休息を楽しんでもらおう。

 で、そのアルビオンなんだけど、この度、めでたくトリステイン王家とのあいだで婚儀が結ばれた。
 もちろん、トリステインのアンリエッタ王女と、アルビオンのウェールズ王子が結婚したわけなんだけど……。
 なんつーか、形としては「アンリ王子とウェンディ王女」が"夫婦"になったらしい。
 予想通りと言うべきか予想の斜め上と言うべきか、ウェンディ王女の艶姿にゾッコンになったアンリエッタ王女は、自分が書いたエロ小説よろしく、男装して"彼女"に求婚。
 ウェンディ王女の方もアンリエッタの倒錯的な男装姿にメロメロになってそれを受諾し、めでたく華燭の典を迎えることとなったワケだ。
 当面は、トリステインとアルビオンは、事実上の連合王国として、ウェールズ王とアンリエッタ女王が共同統治するんだとか。もっとも、一般には"麗人王アンリと、その美しき妃・ウェンディ王妃"として認識されてるらしいけど。
 ……ほんっとーーーに、ダイジョーブか、この両国?

 タバサもといシャルロットは、あのあと日本に来て、看護師の勉強を始めている。高卒資格を大検でとったら、看護学校に入るつもりらしい。いまでも、日々の母親の世話だけは、自分でやってるみたいだけど。

 「――お加減はどうですか、オルレアンさん」
 「ええ、もうすっかり元気になったわ。いつもありがとう、看護婦さん。
  ……昨晩は懐かしい夢をみたの。ちょっとだけ話を聞いてくださる?」
 「――問題ありません。わたしは、貴女の専任ですから」
 「わたしね、娘がいたのよ。目に入れても痛くないってほどの可愛い、青い髪の娘が……もう、随分会ってないけど、今ごろは、看護婦さんと同じくらいの年頃かしら。
 ねぇ、お願いしていい?」
 「――わたしに出来ることであれば」
 「じゃあ、ちょっとこっちに来てちょうだい」
 躊躇いがちに近づく若い「看護師」を、夫人がギュッと抱き締めた。
 「あ……」
 「大きくなったわね、シャルロット」
 「お、おかあさまーーーーー!」

 ルイズのお姉さんふたりに関しては、ついにエレオノールさんの妊娠が判明。これでヴァリエール家も安泰だと、本人達はもちろん、公爵夫妻ともども喜んでいるらしい。
 あと、カトレアさんの方は、つい先日ふたり目を出産。今度は男の子だった。"叔父さん"としては、甥っ子には将来色々な悪さを仕込んでやるとしよう。

 ガリア王については、あの時、着の身着のままで地球(こちら)に連れて来て、今はとりあえずウチの別荘に住ませて、管理人みたいな感じで働いてもらっている。
 当初は、ひとつの世界を破滅させようとした男だとは思えないほど虚脱してたけど、こちらの世界の文化文明を知るうちに、少しずつ元気を取り戻してるみたいだ。
 なんだか憑き物が落ちたみたいに穏やかな表情になったし、何より歳相応に老けた感がある。
 最近ではすっかりこちらの社会風俗にも慣れて、別荘近くの喫茶店の雇われマスターみたいなことも兼任してるらしい。
 そう言えば、その喫茶店では、看板娘と言うにはちとトウがたった感じの美人ウェイトレスが働いてるらしいけど……まさか、ね。
 ちなみに、ガリア自体は、娘のイザベラさんが継いだみたいだな。俺達はあの決戦時にチラと顔合わせた以外はほとんど面識ないけど、シャルロットは、「いい気味。せいぜい苦労すればいい」とか言ってたから、あまり性格はよろしくないのかもしれない。

 魔法学院関係では、シエスタがついに学院を辞めて、王都で店を持った。ただし、大衆酒場の「あじ妖精」の支店じゃなくて高級料亭。その名も「東方美食倶楽部」。
 貴族を中心に、富裕な商人も含め「違いのわかる食通」を対象としたお店らしいけど、それなりに繁盛してるみたいだ。
 学院では、コルベール先生がついに熱気球型飛行船の実用化に成功したとか。ヒントは俺とルイズから教えてあったけど、それでもそこに独力で至るとは、やっぱあのオッさん天才だったんだなぁ。
 キュルケがそれに目をつけて、ゲルマニアの方で魔法を使わない大型飛行船の就航を計画しているんだとか。さすがは、商売人貴族(ツェルプストー)の娘ってところかな。

 * * * 

 「ハァ……何だか退屈ねぇ」
 魔法学院の三年生になったものの、親しい友人たちが次々辞めていったキュルケは、溜め息をつく。
 「あーあ、あたしも学院辞めちゃおうかしら」
 とは言え、実家に帰っても親がうるさいだけだ。ここにいれば、少なくとも身の回りの平和は確保できるし、何より、たまにルイズたちがコッソリ遊びに来てくれる。

 ──プップーー!

 「ん?」
 窓の外で聞き覚えのある音が鳴っている。
 (あれは、確か向こうの世界のクルマの"くらくしょん”、だっけ?)

 「きゅーるーけーちゃん、あそびましょ!」
 「ルイズ!? それにサイト、タバサ、テファまで!」
 女子寮の外には、白い自動車が止まっており、窓から今言った4人が顔を出している。
 「へっへー、こっちも夏休みでしょ? 今からドライブ行かない?」
 「免許とったんだ。まぁ、クルマの方はレンタカーだけどな」
 「うぅ、黙って抜け出して来ちゃったけど、いいんでしょうか?」
 「お姫様稼業にも休暇は必要。それにあなたは頑張り過ぎ」
 懐かしい面々に、つい目頭が潤みかけるのを気力で押し止め、キュルケは、叫んだ。
 「もちろん、行くわよ! 待ってなさい!」

~「ルイズは悪友(とも)を呼ぶ!」 FIN~

-----------------------
本編は、これにて終了。
無理やりな感もありますが、一応完結させることができました。
ここまで読んでくださった皆さんに感謝します。
ありがとうございました。
ちょっとしたショート番外編もいくつか用意してありますので、次回の更新時にでもお見せします。

<オマケ>

「のぅ、シュレディどん、川向いのはいったいどーしたんかのぅ」 ←エルフ語なまり
「さぁなぁ、長の命令で、アクマどもの国さ行って、戻ってきてから、人が変わったみたいじゃからな」 ←エルフ語なまり
「"ちきぅは青かった!"とか"おお神よ、かんしゃします"だのヘンなコトばっか言ってるしのぅ」 ←エルフ語なまり
「長の見立てでは、"さんそけつぼーしょー"とか言う、頭の病らしいがなぁ」 ←エルフ語なまり
「ほんに、あの凛々しかったビダーシャルどんがのぅ」 ←エルフ語なまり

 とっぺんぱらりのぷぅ
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No title

最初から最後まで読ませて頂きました。とても面白かったです。
皆がハッピーエンドになって自分もなんだかうれしい気持ちになりました。
そして最後に、いままでお疲れ様でした。
また何か書いてくれたらうれしいです。

No title

最後まで一気に話に引きこまれました。心が暖まる作品をありがとうございました。
エルフの耳を整形で何とかするという方法は意外かつこちらの世界ではもっとも無難な方法ですね。
とっぺんぱらりのぷぅには吹きました、番外編も楽しみにして待っています。

No title

>B-Hさん

>皆がハッピーエンドになって自分もなんだかうれしい気持ちになりました。
そう想っていただけたのなら何よりです。
拙い作品におつきあいいただき、ありがとうございました。

>ABSさん
>最後まで一気に話に引きこまれました。心が暖まる作品をありがとうございました。
ありがとうございます。
甘いかもしれませんが、ビダさんにも救いを残しておきたかったので。
昔話風〆の「とっぺんぱらりのぷぅ」はお気に入りだったり。
プロフィール

KCA(嵐山之鬼子)

Author:KCA(嵐山之鬼子)
Pixiv、なろう、カクヨムなど色々書いてます。感想などもらえると大変うれしいです。
mail:kcrcm@tkm.att.ne.jp

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